BMWのiシリーズは、同社が考える「サスティナブル=持続可能」な自動車社会を目指す究極の環境負荷対応モデルです。しかもあのBMWのスローガン「駆け抜ける歓び(Freude am Fahren)」も漏れなく付いてくるってんだからどんなカラクリ? 本当にBMWの言う通り、究極のサスティナビリティと心揺さぶられる走りっていうのは両立できるものなのでしょうか。
そんな素朴な疑問は、2011年9月の「フランクフルトモーターショー2011」で披露されたi8のコンセプトベースとなった「VISION Efficient Dynamics」や、2013年3月の「ジュネーブモーターショー2013」で公開されたBMWにしちゃいやにずんぐりむっくりな「i3コンセプトクーペ」を見ても解決されず。「ホンマにコレ市販化できるんかいな」と疑いつつも心待ちにしていたのでした。
そして東京モーターショー2013の直前、われわれ報道陣に公開されたのは、ああ素晴らしきかな、まるであのコンセプトカーの雰囲気を崩さない、何とも凝った造形を持つ車両だったのです。
特にi8のCピラーから後方、テールランプにかけての抉(えぐ)れたような、宙に浮いているかのような不思議な形状には感激しました。と同時に、「うっわ〜、洗車面倒くさそう!」という瞬時の感想も。現実的過ぎてすみません。
まぁi8の価格は1917万円(!)なので、買う人は自分で洗車なんてしない方々でしょうから、真に面倒くさいのはガソリンスタンドの店員さんであろうと思います。しかし、それでもプラグインハイブリッド車ですから給油のタイミングは極端に少なくて済むのに、洗車のためだけにガススタに行かんとイカンというディレンマが生じるのではないかとしょうもない心配をしてしまうのでした。
そんな自由なデザインをかなえたのは、軽量化のため、外板に炭素繊維強化樹脂(CFRP)を採用しているから。
独特の有機的なボディラインは空力性能にも大きく貢献していると高らかにうたっています。とはいえCd値(空気抵抗係数)は0.26。だいたいトヨタ自動車の「プリウス」とか「アクア」と同じくらいですね。
もちろんイイ数値ではありますけども、デザイナーには「金属の外板では決して実現できなかったデザインをやれ」というオーダーが真っ先に入ったと言いますから、数値よりも視覚として、それはそれは戦略的に「先進感」を打ち出してきたと言っていいでしょう。
ちなみに連載第3回で紹介した三菱自動車の「アウトランダーPHEV」と同じくプラグインハイブリッド車であるi8は、最高出力が170kW/231psで最大トルクが320Nmという排気量1.5l(リットル)の直列3気筒ツインターボエンジンで後輪を駆動し、定格出力が96kW/131ps、最大トルクが250Nmのモーターで前輪駆動します。システムトータルで、最高出力は266kW/362ps、最大トルクは570Nmで、時速0〜100kmの加速時間は4.4秒と発表されています。
で、燃費はEUのテストサイクルを日本式に換算するとざっと40km/l。
また、モーターだけで走行する際も、最高時速は120kmで、満充電状態から35km走行できます。
それに、エンジンとモーターの両方を使って走行モードを最適化させれば、最高500kmも走り続けられるというのだから、300馬力越えのスポーツクーペとして考えれば文武両道とでも言いましょうか、かなりの優等生であることは間違いナシ。まるで「ド○えもん」でいうところの出来杉クンじゃないの!
1つ難点はといえば、プラグインハイブリッド車でありながら、国内のEV用急速充電規格であるチャデモ(CHAdeMO)に対応していないこと。普通充電についても、日本の家庭で最も広く使われている100V電源でなく、200V電源にしか対応していません。
200V電源さえ用意できれば、約8時間で満充電にすることができます。極論を言えば、たとえ200V電源がなくても、プラグインハイブリッド車なのでガソリンエンジンで走っちゃえるんですけどね。
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