日本の自動車メーカーの展示で最も注目されていたのは、富士重工業の「スバル」ブランドのイメージのけん引役として投入される新型「WRX」だ。年産70万台程度の自動車メーカーの記者発表にこれほどの人が集まる理由は、WRXそのものへの注目度の高さもあるが、同時にスバルのアメリカでのブランド力の強さもある。
一部の報道では、WRXを米国仕様としているが、日本と米国で車両を作り分けているわけではない。従来スバルは、米国市場でWRXと「WRX STi」をラインアップしており、これに対して日本ではWRX STiのみを販売していた。事実、スバルは新型のWRXやWRX STiの日本市場導入時期などについてコメントしていない。現状、日本でもWRX STiはイメージリーダーであり、販売店に客足を集める重要な看板になっている。ただし、現段階では日本市場における「レガシィ」の後継として開発し、東京モーターショー2013でワールドプレミアとして発表した「レヴォーグ」を強調するために、あえてWRXやWRX STiのことは言及しないと判断したのだろう。少なくとも2014年には、WRX STiを日本市場に導入するであろうことは予想できる。
従来、米国市場のWRXは5段変速のマニュアルトランスミッション(MT)しか選択できなかったが、今回は6段変速MTに加えて、「リニアトロニック」なるシーケンシャル変速付きCVTも選べるようになった。ドライブモードを「D」の時には無段階変速だが、「S#」に切り替えると、8段階でシーケンシャルに変速できる。パワートレインの強化も特筆すべき点だ。これまでWRXには最高出力195kW(265ps)/最大トルク330Nmを生む排気量2lの水平対向4気筒ターボエンジンが搭載されていたが、新モデルでは最高出力197kW(268ps)/最大トルク350Nmへと動力性能を向上させている。さらに、ボディ剛性も高めて、足回りの最適化やホイールの高剛性・軽量化などと合わせて、走行性能の向上もうたわれている。価格は未定となっているが、WRXの上級モデルに当たる「フォレスター」や「レガシィ」の販売価格を考慮すると、2万6000〜3万米ドル(約268万〜309万円)の設定と想像される。
東京モーターショー2013では、トヨタ自動車の燃料電池車「TOYOTA FCV CONCEPT」が話題だったが、LAオートショー2013では、ホンダが発表した燃料電池車「FCEV CONCEPT」に注目が集まっていた。燃料電池のパワートレインが小型化したのは、どちらにも共通のトピックスだが、トヨタが小型セダンに載せて技術の先進性をアピールしたのに対し、ホンダはデザイン志向のLAオートショーへの出展を意識してスタイリッシュなスポーツクーペに搭載してみせた。技術的には、燃料電池のエネルギー密度を従来比で60%増の3kW/lまで高め、同時に33%も小型化したことが注目に値する。
記者発表には、既に北米で“市販”されている(実際にはリース販売)「FCXクラリティ」のオーナーが集まり、「性能と環境を汚さない心地よさ」や「通勤などの日常の生活の中で使える利便性の高さ」をアピールした。一方で、オーナーの中からは「日常生活で使う際の不満はない。ただ、FCXクラリティの水素タンク満タンの状態から走行できる距離が384kmと短いので、ロサンゼルスから約160km離れたサンタバーバラ(海辺の観光地)まで安心して往復できない。次世代モデルでは週末の小旅行に出掛けられるだけの走行距離が欲しい」など、普段の生活の中で使っているからこそのコメントがあがっていた。この点FCEV CONCEPTは、70MPaの高圧水素を充てんできる水素タンクを搭載し、480kmの走行距離を実現した。
同時に、General Motors(GM)と次世代燃料電池システムの共同開発を行うことも発表された。その目標時期は2020年というから、今回発表したFCEV CONCEPTはホンダ独自の開発である。ホンダがGMと手を組んだ理由は、航空宇宙や医療など自動車以外の分野でも先進技術を開発していることに着目したからだ。また将来の市場性を考えても、GMと手を組むことは、北米市場における需要を満たす車両の開発にもつながりそうだ。
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