プリントサービスを使った製品を販売している団体も多くあった。
超小型飛行体研究所ではもともと手作りの模型飛行機を作っていたが、骨組みに3Dプリンタを活用するようになったという。3Dプリンタを使おうと考えたのは、「手作りだと(飛行機作りが)自分だけで閉じてしまう」(宗像俊龍氏)と感じていたからだという。
骨組みを手作業で作ると、針金を一定角度で曲げたりといった細かい作業が必要だ。飛び方の調整には経験も必要なため、いわゆる職人技になってしまっていた。そのため宗像氏がいくらよく飛ぶよう工夫しても他の人に簡単に伝えられないというジレンマがあったという。
そこで3Dプリンタの活用を検討。価格は樹脂と比べると安くはないものの、ナイロン12を材料とした粉体レーザー光線積層による出力であれば、強度やしなり具合の点で適切だと分かったという。プリンタを自分で持つのはメンテナンスなどが大変なので、今のところはプリントサービスを活用するそうだ。データの設計については「Autodesk 123D」を使用している。
3Dプリンタはメーカーやプリントサービスが各社から出品されていた。ざっと見ただけでも幾つかの3Dプリンタ関連の島が見られた。オープンソースベースの自作プリンタや、組み立て品を購入して駆動ソフトウェアやハードウェアを改造したものなどアプローチはさまざまだ。リンク機構のプリンタの動作を円形にノズルが動くよう改造したものもあった。既存のプリンタを購入したところ精度不足を感じたため、とことん精度にこだわったという自作プリンタもあった。
小型コンピュータのArduinoやRaspberry Piを使った展示が多かったのも今年の特徴だ。Arduinoを使ったPCR装置を出展していたのは鳥人間の久川真吾氏である。
PCR装置とは、遺伝子研究には欠かせない、特定の遺伝子を増幅させる装置である。通常は40万円から100万円になる高価な製品であるため、導入できるのは専門的な研究教育機関などに限られる。だが基本的な機能は温度の上げ下げの繰り返しであり、最低限の要素に絞れば低価格で作ることが可能だという。これにより高等学校や中学校などの教育機関でも、購入のハードルが低くなる。
この製品は米国のWebサイトにアップされているオープンソースの設計図をベースとしてさまざまな改良を行ったのち、販売に至っている。PID制御でペルチェ素子により温度を管理する。元の設計図は電源内蔵タイプで重く大きかったために、ACアダプター利用に変更。インターネット接続機能を搭載したり、Arduinoを使うことによって後々再利用できるといったことも考えられている。
現在、代理店を経由した国内販売を開始したところだという。また海外への販売は基本的に久川氏本人が担当しており、マレーシアの科学館に納品が決まっている。まずは教師に向けたワークショップで使用されるそうだ。
「伊藤技術研究所。」はArduinoを使って始動を自動化したグローエンジンを展示していた。
ラジコンなどの模型に多く使われるグローエンジンは、燃料の輸送やプラグ点火、スターターのオンオフ、アクセル調整などの一連の動作を1つずつ進めていく必要がある。これをボタン1つで自動で行うようにしていた。他にも電子楽器や光りものなどの電子ガジェットが集まるフロアでもArduinoを使った展示が多く見られた。
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