生産拠点だけでなく、組み込みソフトの開発拠点も海外移転が進んでいます。海外への赴任や海外拠点とのやり取りで、組み込みエンジニアにも英語が必要になってきましたが、「ネイティブと同レベルで英語を話せる必要があるか」というとそうでもないようです。
本記事はパソナが運営する人材紹介サービスブランド「パソナキャリア」からITmediaキャリアに寄稿された記事に加筆・修正して転載しています。
「英語は得意ですか」と聞かれて、胸を張って「はい」と答えることはできますか?
製造業エンジニアに求められる要件として、「語学力」はよく挙げられるポイントです。今回は製造業エンジニアの中でも、特に組み込みソフト開発のエンジニアについて、キャリアにおける語学力の重要性と実際の転職市場での評価について考察します。
製造業においては東南アジアをはじめ、海外へ生産拠点を移転することが珍しくなくなってきました。
一方、組み込みソフトの開発においては、オフショア開発を含め、ソフトウェアの開発拠点を海外に移転させることは、数年前までは積極的に行われていませんでした。「国内から海外に仕様を伝える際のコミュニケーションがうまくいかない」「機種特有の部分を意識してプログラミングする必要があるため、新たな開発者を育てることが難しい」「ハードウェアとソフトウェアの連携が重要だが、試作機の作成は日本で行うため、ソフトウェアの開発拠点を海外にすると非効率」などがその理由です。
しかし、組み込みエンジニアの不足が懸念されるようになり、ここ数年で状況は変化してきました。組み込みソフトの開発においても「(長期的な視点を含めて)海外の労働力に頼らざるを得ない」と考える企業が増えています。そのため、組み込みソフトの開発拠点を海外に置くメーカーが増えつつあります。
結果として、組み込みエンジニアも海外拠点とのやり取りや、海外赴任の可能性が高まっています。組み込みエンジニアに語学力が求められるのには、こうした背景が存在します。
メーカーを中心に、キャリア開発において語学力が重要視されています。メーカーでのキャリアアップや、上流から開発に関わりたいと考える人にとっては、英語は避けて通れません。具体的に必要になる2つのケースを紹介します。
前述のとおり、組み込みソフト開発において海外へ拠点が移るケースは増えています。そのため、海外赴任の可能性は十分にあります。
一般的に赴任する期間は数年です。赴任後はポジションが上がって帰国するケースがほとんどです。海外赴任は、社内でキャリアアップをするパスとして有効です。
また、海外拠点があるということは、海外とのやり取りが必要になるということです。そのため、海外に赴任することはなくても、海外のエンジニアとやり取りする必要が出てきます。
海外に拠点がなかったとしても、メーカーによっては、ある程度のポジションに昇格するために、TOEICの点数を必須としている企業が多く存在します。
各種の部門長など管理職といわれるようなポジションだけでなく、現場でエンジニアとして働く主任などのポジションでも、TOEICの点数が求められるケースがあります。
「メーカーに転職したいけれど、語学力に自信がないから……」という人がいるかもしれません。
しかし、海外とのやり取りを密に行わなければならないポジションを除き、高い語学力を求める求人は、実はほとんどありません。
実際のところ、語学力を求めるといっても、英語アレルギーがなければよいレベルです。「今後学んでいく」という気概さえあれば、問題はありません。
そうはいうものの、「英語は苦手なので英語が必要なメーカーへの転職をためらってしまう」という人へ、英語アレルギーをなくすための安心材料を2つ挙げます。
英語が母語でないもの同士が話す分、聞き取りにくいことなどもあるかもしれません。しかし、かえって必要最低限のシンプルな表現や会話になります。そのため、ブロークンな英語であっても、意思さえ通じればどうにかなることが多いようです。
業務で使う表現は限られています。必要な表現さえ覚えれば業務はまわります。また、プログラムや仕様書を見ながらのやり取りが多いので、実物を示しながら伝えることができます。
英語はツールです。重要なのは、技術力と伝える意思です。
転職において、メーカーで重視されるのは「コミュニケーション能力」。語学力が必要なかったとしても、さまざまな部署の人と円滑なコミュニケーションを取りながら、業務を進める能力は必須です。
英語によるやり取りもコミュニケーションの一環です。キャリアカウンセリングでコミュニケーション能力が高いと感じた人は、TOEICの点数が低くても、転職先で英語を使う環境に配属された場合、コミュニケーション能力を生かして活躍しています。
もちろん、語学の勉強は無駄ではありません。しかし、単にTOEICの点数を気にするよりも、周囲と連携しながら業務を進めた経験の方が、役に立つことでしょう。
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