世界レベルの戦いはかくも厳しい――それでも東大チームの挑戦は続くフリースケール・カップ世界大会(2/3 ページ)

» 2013年09月09日 12時40分 公開
[朴尚洙,MONOist]

中国代表の恐るべきスピード

 日本代表の東大チームは、8月22日の前日練習の結果から、直線での伸びが足りないと判断。8月23日の本戦当日の前に、モーターを新しいものに交換することにした。もちろん、制御ソフトウェアの改良作業なども行っている。

 8月23日は、開会式の後、中国代表を決定する準決勝を行ってから、9カ国の参加チームによる最後の練習走行を経て、本戦を開始するというスケジュールになっていた。

開会式であいさつするフリースケール社長のGregg Lowe氏 開会式では、フリースケール社長のGregg Lowe氏が、「合計で1000チームが参加した予選を勝ち抜いた各国代表チームの健闘を祈りたい」とあいさつ。同氏の他、中国政府関係者なども登壇した

 衝撃的だったのが、準決勝で中国代表に決まった北京科技大学チームのロボットカーの速さだ。東大チームを含めた8カ国の代表とは比較にならない、異次元のスピードを実現していた。それまでは、フリーダムボードを使用する米国代表のカリフォルニア大学バークレー校や、マレーシア代表のスインバン大学が順調な仕上がりを見せていたが、北京科技大学チームが一気に優勝候補に躍り出た格好だ。

 それでは、各チームのロボットカーと、本戦の開始直前に公開された競技コースを併せて見ていこう。ロボットカーの写真は、本戦の走行順に並べている。

左から、マレーシア代表のスインバン大学、米国代表のカリフォルニア大学バークレー校、EMEA代表のスロバキア工科大学のロボットカー。スロバキア工科大学は、ラインカメラセンサーモジュールを支える支柱にスロバキア国旗を飾っている(クリックで拡大)
左から、中国代表の北京科技大学、日本代表の東大、ブラジル代表のサンパウロ大学応用科学部のロボットカー(クリックで拡大)
左から、台湾代表の国立台湾科技大学、インド代表のバンナリ・アンマン工科大学、メキシコ代表のメキシコ国立工科大学のロボットカー(クリックで拡大)
フリースケール・カップ世界大会の競技コース フリースケール・カップ世界大会の競技コース(クリックで拡大)

 各チームは、この競技コースを1周する走行タイムを競う。2回のトライアルのうち、より早い走行タイムが記録となる。また、ゴールラインから3mまでの範囲内で停止できなければペナルティとしてタイムが1秒加算される。

 それでは、レース結果を見ていこう。最初に走行したマレーシア代表は、1回目のトライアルでたたき出した17.60秒が記録となった。下馬評通りの実力を発揮した好タイムだったこともあり、2番目以降の走行順のチームに対して大きなプレッシャーになった。

 2番目に走行した米国チームは、2回のトライアルとも、ゴールラインから3mまでの範囲内で停止できずペナルティを受けた。記録は20.54秒で、マレーシア代表に大きく差をあけられてしまった。

米国代表のロボットカーが走行する様子。ゴールラインから3m以内に停車できなかったため1秒のペナルティが加えられた(クリックすると再生)

 3番目は、EMEA代表のスロバキア工科大学チームである。同チームは、1回目のトライアルは低速で走行することによって競技コースをトレースし、2回目のトライアルではそのトレース結果を基により速い速度で走行するという戦略で競技に臨んだ。残念なら、2回目のトライアルは22.14秒という記録に終わったが、興味深い試みだったと言えるだろう。

スロバキア代表の2回目のトライアル。1回目のトレース結果を使って、コース中央の黒線に合わせてきちんと走行している(クリックすると再生)

 4番目は優勝候補の中国代表である。本戦でもその実力をいかんなく発揮し、1回目のトライアルが14.97秒、2回目が14.89秒とダントツの記録を打ち立てた。

中国代表のロボットカーが走行する様子。カーブやシケインで、コース中央の黒線に合わせずショートカットしている分、タイムを短縮できている(クリックすると再生)

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