以下では、前ページの明るさの単位や指標について説明します。
照明の分野で使われる各単位の量は心理物理量と呼ばれるもので、SI単位系の他の単位とは単純に変換して考えることができません。照明の分野で使われる光量は人間の目が感じることが可能な量で考えます。
人間の目はおおよそ緑色付近の感度が最も高く、赤色や青色になるに従い感度が下がります。つまり物理的なエネルギー量と目で見える光の量については必ずしも「1:X」の関係になる訳ではありません。照度計で同じ値を示す光であってもその成分(波長ごとにどのくらいの比率で光が含まれているか)によって、物理的なエネルギー量は異なります。
光の明るさを示す単位には、照度の単位「lx(ルクス)」、全光束の単位「lm(ルーメン)」などがあります。1lxは、「1平方メートルの面が1lmの光束で照らされるときの照度」とされています。定義の詳細については、ここでは割愛します。
具体的にどのくらいの明るさがどのような値になるかとの例を挙げますと、真夏の昼間の晴天下で10万lx、曇天下で「3万lx」、野球場の内野フィールドで「2000lx」、美術館の日本絵画等ですと「50lx」くらいです。
一般の照明として使われている光には白熱電球の赤っぽいものから、蛍光灯の白っぽいものまで、色味が違うものがあります。この色味の度合いを色温度と呼ばれる値で表現します。単位は、熱力学的温度の「K(ケルビン)」。
物体が熱せられてある程度の温度になると可視光を出し始めます。この可視光の成分はその物体の温度によって変化します。温度が低ければ赤っぽく、温度が高ければ白っぽくなります。
色温度の正確な定義としては、ある光を放つ黒体の温度と言うことになっています。大体の目安としては、朝焼けや夕焼けの光が「2000K」、白熱電球の光が「2600〜2800K」、事務所に使われているような蛍光灯で「5000K」、昼間の太陽光で「5000〜6000K」程度です。
ある照明の光である対象を見たときに、どれだけ自然光(電球からの光も含む)で見たときと色の見え味にずれが生じるかを定量的に示した値のこと。その定義は「JIS Z 8726」(光源の演色性評価方法)にまとめられています。ここで評価の対象となる色が15色決められていて、1〜8番目の色での演色評価数の平均を平均演色評価数(Ra:アールエー)といい、これが一般的によく使われています。
ちなみに演色評価数の最大の値は「100」となります。家庭内で使う照明であればこの値が「80」を超えるようなものであれば、大体の色は自然に見えます。美術館などで用いられる照明ではこの値が「95」を超えるようなものが求められます。9〜15番目の色に対する演色評価数は特殊演色評価数と呼ばれるもので、照明の用途のよってはこの値も重要な指標となります。
作った本人が自分用に使うものであって、販売をしないものであっても、家商用電源(100Vのコンセント)に接続して使うものであれば、電気用品安全法に準拠したものを作った方がよいでしょう。
このような規制の目的は、
です。このように書くと難しそうですが、電気用品安全法の技術基準を満足したACアダプターで動くものを作っておけば大丈夫です。
このあたりの法律については、「電気用品安全法(電安法)」に掲載されています。興味ある方は参考にしてください。特にこのリンク先には、今回紹介した資料が一般的な言葉を使って分かりやすく書かれています。また私たち自身が消費者の立場として身を守るために有用な情報について解説されています。
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今回の検討で、大体作るべきモノの方向が見えてきました。次回はこの照明器具で使う部材を具体的に選定するプロセスと、購入に関して説明します。
佐久間 茂(さくま しげる)
1969年生まれ。株式会社キテラス代表取締役。キャリアの前半では機械設計屋として写真現像機、複写機、レーザーマーカーの開発設計に従事。2002年に照明器具メーカーに転じ、美術館・博物館向け展示用照明分野を中心として従事。「仕事は理系、趣味は文系」の身にとって展示用照明の分野が天職と感じ、勢い余って2010年に株式会社キテラス(「きれいに照らす」の意)を創業。創業後は美術館・博物館向け照明器具の設計製造、時には展覧会のライティングなども行いながら、趣味と仕事の境界がほとんど消失した日々を過ごしている。共著で「LED照明のアプリケーションと技術―光学設計・評価・光学部品―」(シーエムシー出版)がある。
「飛行機は好きなだけで、操縦は出来ません(^_^;)」
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