米国の半導体メモリ大手マイクロンは、国内唯一のDRAMメーカーだったエルピーダメモリの買収を完了したと発表した。2013年末までに、エルピーダの社名はマイクロン・メモリー・ジャパンに変更される。社長を退任する坂本幸雄氏は、「社名は変わるが、エルピーダの火が消えるわけではない」と述べた。
米国の半導体メモリ大手のMicron Technology(以下、マイクロン)は2013年7月31日、東京都内で記者会見を開き、国内唯一のDRAMメーカーだったエルピーダメモリ(以下、エルピーダ)の買収を完了したと発表した。エルピーダの会社更生法の適用申請を2012年2月に決め、マイクロンによる買収が完了するまで管財人を務めたエルピーダ社長兼CEOの坂本幸雄氏が、管財人と社長兼CEOの両方を退任してエルピーダから去ることも併せて発表。後任の管財人兼社長には、エルピーダの携帯電話機向けDRAM事業をけん引し、取締役COOを務めていた木下嘉隆氏が就任する。
マイクロンは2012年7月、エルピーダの買収および支援を目的とするスポンサー契約を締結。買収総額が約2000億円(当時の為替基準で約25億米ドル)に上ること、エルピーダが株式の65%を保有する台湾Rexchip Electronicsの株式について、同じく台湾の半導体メーカーであるPowerchip Technologyから24%分の株式を100億ニュー台湾ドル(当時の為替基準で約3億3400万米ドル)で取得することなどを発表していた(関連記事:Micronがエルピーダ買収を正式発表、買収額は2000億円)。
既に、スポンサー契約の前提となる更生計画の認可や米国裁判所の承認は得られている。また、マイクロンがエルピーダの全株式を取得する際に支払うことになっていた600億円が払い込まれたため、2019年までの更生計画の第1回目の弁済の目途が立った。さらに、好調な携帯電話機向けメモリの販売によりエルピーダの業績は回復しており、更生計画の骨格も固まった。そこで、マイクロンによるエルピーダの全株式取得とRexchipの24%分の株式取得が完了する7月31日に会見を開くとともに、管財人兼社長の交代も発表する運びになったという。
マイクロンCEOのMark Durcan氏は、「エルピーダを統合することで世界一のメモリ企業になる道筋が見えてきており、今後が非常に楽しみだ。マイクロンはこれまでさまざまな企業を買収して成長してきたが、エルピーダと一緒になることで300mmウエハーラインの生産能力、製品ポートフォリオ、特許などの面で、メモリ最大手のSamsung Electronics(サムスン電子)に対抗できるようになった」と買収の成果を強調した。
直近12カ月の両社の売上高は、マイクロンが82億米ドル、エルピーダ(Rexchipを含む)が36億米ドルで、合計118億米ドル。300mmウエハーで換算した月間の生産能力は、マイクロンが37万5000枚、エルピーダが18万5000枚で、合計56万枚となった。製品ポートフォリオも、マイクロンが有力なサーバ向けDRAM、NANDフラッシュ、NORフラッシュに、エルピーダが得意とするモバイル機器向けDRAMが加わる。
エルピーダは、マイクロンによる全株式の取得に合わせて、2013年末までに社名を変更する。新社名は「マイクロン・メモリー・ジャパン」を予定。既に、開発部門については、マイクロンとエルピーダによる協力体制が構築されているという。
製品ブランドについては、数カ月間ほどエルピーダブランドでの出荷は行うものの、最終的にはマイクロンブランドに統合する予定だ。
Durcan氏は、エルピーダの大規模な人員削減を検討していないことも明らかにした。先端DRAMのチップの開発と製造を担当する広島工場(広島県東広島市)や、メモリ製品の試験やパッケージに関する先端開発を行う秋田工場(秋田県秋田市)については、現在の体制を維持したい考え。管理部門についても、「エルピーダは既にかなりの減量経営を行っているので、大幅な削減は必要ないだろう」(同氏)としている。
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