はんだ付けに用いるリフロー炉の操作方法や、実装ラインの品質を管理する現場の人材育成の手法を解説する本連載。今回は、現場で初期の良否判定と解析ができる現場要員を短期間で育成するシステムの構築について紹介する。
本連載は「エレクトロニクス実装技術」2012年8月号の記事を転載しています。
7月号まで、実装現場での不良対策について参考事例や簡単な確認実験方法について紹介してきた。最近は、国内大手の現場においても不良の改善が進んでおらず、特に大手などでは海外展開や人事異動によって経験者が不足しているのと同時に、現場が離れた場所にあるため、すぐに確認対応することができづらい状態である。またその現場でも、派遣社員や請負によって、積極的な改善活動がなされづらい状態にある。中小企業においては、発注元の指示以外の条件で実装することは許されないため、昔のように共同作業や提案がしづらく、相変わらず同じような不良が発生している。
このような状況が、いきおい、必要以上の検査システムの導入につながっており、その原価償却がコスト競争を不利にしている。一般的に、検査機1台につき要員1名が必要であるといわれている。これは、検査基準を厳しくすると、不良判定が多く出てラインが止まってしまうので、担当者が再度基板をチェックし直すことになるからである。一方、判定基準をゆるめると、最終工程からのクレーム多くなり、修正作業が増えることになる。
検査機はあくまでも人の目では追い切れない部分の補助として不良の選別を行うものであって、解析を行うものではないので、同じ不良が毎回発生することになってしまうのである。
量産現場で検査機が弾き出した不良品の原因解析をすぐに行い、簡単な再現実験などで確認後に修正を加えることによって、同じ不良が出てくることを抑えることが可能になる。
そこで重要なのは、特別な技能がなくても現場で初期の良否判定と解析ができる現場要員を短期間で育成するシステムの構築である。
これまで筆者は、本誌において、マイクロスコープを活用して抜き取り検査での判定事例を紹介してきた。マイクロスコープは品質管理部門や生産技術者だけが使用するのではなく、現場の作業員専用としてラインフロアに設置し、現場に自由に活用させるのが理想である。実際に、1,000人以上の従業員のいる工場で、そのような導入をしたことで、不良率2ppm以下を達成している事例もある。
筆者がこの工場を訪問した際には、ラインのそばに置かれたマイクロスコープで、既に撮影してある基板の写真を見比べながら、担当者が現状と過去の不良事例についての解析と対策を話し合っていた。不良対策ではまず解析時にいくつかの仮説を立てて、それに基づいて再現実験を行う。この実験には簡単な道具を用い、理論的な可能性の確認程度で十分であるが、ここで大切なのは成果を出すことではなく仮説実験時の条件の変化がどのような結果の変化につながるかを確認することである。これにより、次に起こる不良に対するノウハウが蓄積されて、早く対応することができる。通常、これらの対策方法は一つではないので、その時々、生産時の条件で根本的な対策と応急処置と分けて行うことも可能である。不良率(部品点数換算)が10ppm以下になると、発生した不良を検査後に修正するのではなく、すぐにラインを止めて対応する方が結果としてコストメリットがでるのと同時に、検査工程の見直しにつながる。
はんだ付けの基本は手作業である。フラックスの役割や効果を確認するには、糸はんだを使用して現場で簡単な実験で確認する。実験時は、仮説を立てて理論的な説明が可能かどうかを検証する。実際の現場では、前提となる部品めっきや基板材質・品質および設計が絶えず変わるので、特に確定的な答えを求める必要はない。
フラックスは部品や母材表面の酸化物を除去して金属表面を清浄にし、すずの母材への拡散を通して接合させるが、母材の酸化状態が強いと十分なフラックス効果を得ることができず、接合不良(いもはんだ・ル―ズはんだ)になる。
(1) こてを先に母材にあてる(予備加熱を行う)
こてを先に母材にあて、予備加熱を行うと、母材の表面酸化が進み、フラックス効果が十分に得られない。こうなると、はんだは溶けるものの、完全な接合ができない(図1、図2)。
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