富士通は、子会社の富士通セミコンダクター(富士通セミコン)が手掛ける半導体事業の大規模な再編を発表した。再編によって、富士通セミコンの従業員数は最終的に2000人以下まで削減されることになる。
富士通は2013年2月7日、子会社の富士通セミコンダクターが手掛ける半導体事業の大規模な再編を発表した。パナソニックと新たに設立するシステムLSI設計会社(関連記事)や、TSMCが中核となって設立される新たなファウンドリ企業に約4500人を転籍させるとともに、早期退職募集などによって約2000人を削減する。最終的に、富士通セミコンダクターの従業員数は2000人以下まで削減されることになる。
東京都内で会見した富士通社長の山本正已氏は、「2011年度以降の半導体事業は、市況の悪化や競争環境の変化によって、極めて厳しい事業環境にある。2012年度第3四半期(2012年10〜12月)も営業赤字が続いており対策が迫られていた。今回の決定は苦渋の決断だったが、再編によって2013年度以降の業績回復につなげたい」と語る。
半導体事業再編の狙いとしては、「日本の半導体技術・ノウハウのベースを絶やさない」、「顧客への安定供給を維持」、「雇用と地域コミュニティの要請に最大限応えながら、かつ適正な規模で今後自立して発展していく」の3つを挙げた。
半導体事業の再編計画の詳細は以下の通り。まず、システムLSI(SoC:System on Chipとも言う)事業は、パナソニックのシステムLSI事業と統合し、マーケティング・設計・開発機能に特化した「ファブレスSoC新会社」として分離独立させる。現在は、パナソニックや、ファブレスSoC新会社に出資する予定の日本政策投資銀行とともに、最終契約の締結に向けた話し合いを進めている。ファブレスSoC新会社の設立時期は、「2013年度中ごろ」(富士通執行役員専務の肥塚雅博氏)を想定。ファブレスSoC新会社への出資額については、「独立した半導体企業として事業規模を拡大してもらいたい」(肥塚氏)として、限定的な出資にとどめる方向性を示した。
ファブレスSoC新会社には、富士通セミコンダクターが手掛ける全てのASICやASSP製品が移行することになる。例えば、富士通がスーパーコンピュータやサーバ向けに開発している「SPARCプロセッサ」も対象になる。車載情報機器やディスプレイメーターなどに採用されているプロセッサファミリ「Jade」なども含まれるという。
ただし、山本氏は、「SPARCプロセッサに必要となる半導体の基盤技術(アーキテクト)は、富士通本社で開発してきたし、今後も富士通本社で開発する。ただし、半導体製品としての設計業務(レイアウト)は新会社に担当してもらうことになるだろう」と説明する。
次に、三重工場(三重県桑名市)の300mmウエハーラインを、大手ファウンドリのTSMCが中核となって設立される新たなファウンドリ企業(新ファウンドリ企業)に売却する。新ファウンドリ企業については、「詳細は決まっていないものの、TSMCが主要な役割を果たすことになる。今回当社が発表することもTSMCは了解している」(肥塚氏)という。新ファウンドリ企業には、富士通も一定額を出資する方針である。パナソニックの出資については、「当社が回答することはできない」(同氏)とコメントを避けた。
富士通セミコンダクターから、ファブレスSoC新会社と新ファウンドリ企業に転籍する従業員数は合計で4500人程度を想定している。
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