実装分野の最新技術を分かりやすく紹介する前田真一氏の連載「最新実装技術あれこれ塾」。第2回テーマは「IBIS」。最近のIBISが決めた標準化とIBIS-ISSについて紹介する。
本連載は「エレクトロニクス実装技術」2011年5月号の記事を転載しています。
IBISは2011年1月に、『IBIS Interconnect SPICES ubcircuits Specification』(IBIS-ISS)という新しい規格の原案(Draft1.0)を発表しました(図1)。現在はこのドラフトに対するコメントを受け付けています。
このIBIS-ISSについては、以前から議論はされており、2010年11月に日本で開催されたIBIS Summit Tokyoでも発表が行われましたが、いよいよ規格としてまとまったわけです。
IBISはここ数年、以前からのIBISモデルの機能充実や、モデルの啓蒙などだけではなく、積極的に関連規格の標準化を行ってきています。
これは、IBISモデルが広く世間に認知され、啓蒙作業から開放されたことにも原因がありますが、IBIS4.1で多言語モデル(Multi Lingual Model)の機能をIBISが取り入れたことが大きく影響しています。
これは、これまでデジタル回路の論理検証に普及していた、VHDLとVerilogと呼ばれる論理設計言語にアナログ回路素子を扱えるようにした言語、VHDL-AMS,Verilog-AMS(Analog Mixed Signal)をIBISモデルが取り込んだ機能です。
VHDL-AMS,とVerilog-AMSは解析のモデルではなく、回路の動作を記述する、ハードウエア記述言語と呼ばれる言語です。
IBISモデルでは、このAMSで書かれたIOモデルを作成するプログラムを[ExternalModel]として登録しておきます。AMSを実行できるシミュレータでは、あらかじめ[ExternalModel]を実行し、IOモデルを作成してから、このモデルを使った伝送線路解析を行います。
なぜ、このような複雑な機能をIBISモデルに取り込んだかというと、ASICを使った回路が複雑になったからです。
たとえば、PCIexpressでは、プリエンファシスという機能を使って、データが00、11と連続して同じ場合と、01、10のようにデータが変転した場合とで、ドライバを切り替えることが規格として規定されています(図2)。
このような解析を行う場合には、データによってモデルを切り替えて解析する必要があり、たんなるIOモデルでは不可能でした。そこで、データによってモデルを切り替えるプログラムを組んで、正しいIOモデルを切り替えながら解析を行うためには、IBISモデルの中にプログラムを組み込む必要があったのです。
しかしこのような動きは、IBISモデルをシミュレータが使う単なるモデルからシミュレータの動きをコントロールする制御言語的な機能を付加するものです。これはシミュレータがIBISモデルを解析を実行するのではなく、IBISモデルがシミュレータを制御して解析を実行するという主客逆転の動きです。
このような解析の複雑さに対して、IBISモデルが受身ではなく積極的にシミュレータに対して働きかけをしはじめたことによって、IBISの規格標準化の動きがにわかに積極的になってきました。
これには、もう1つ、IBISモデルが全世界に認知され、全世界での伝送回路解析モデルの標準となった事でIBIS委員会が規格標準化の組織として世界的に認められるようになったことも大きな理由となっています。
この2つの理由、すなわち
により、ここ数年、IBIS委員会が積極的にこれまでのIBISモデル以外のモデルの標準化に努力してきました。その1つが最初に紹介したIBIS-ISSです。今回は、最近のIBISが決めた標準化とIBIS-ISSについて紹介しましょう。
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