次は、「ロット数」についてです。
ロット数とは、例えば「1000個/月」という具合に1カ月で1000個生産する、あるいは部品会社に生産を依頼するときに一度の注文で1000個生産するという意味です。前述したリンゴの例に戻れば、ロットとは、「1袋5個入り」の「1袋」に相当します。
次は、「ロット倍率」だ。もう一度図1を見ろ!
ロット1000個の材料費を「1」とすると、ロット30000では、なんと半額だ。その逆を説明しろ! これは命令だぁ。
合点承知! ロット1000個の材料費を「1」とすると、ロット100では、なんと4.7倍ですね。すごい! 経済意識や低コスト化意識が高まった!
そうだ。その通りだ。学者はどうか知らねぇがよぉ、職人はこれを、「量産効果の天国と地獄」って呼んでいるんだ。分かったら「ハイ!」と言えーッ!
先述の隣国のEV開発において、集中購買で実際に2割から3割のコスト低減効果を得ることに成功しています。特に、輸送費と利管費(倉庫における部品や商品の管理費用)は、半減したとの報告があります。
オメェらみたいな技術者にはよぉ、新鮮な情報かも知れねぇがよぉ。オイラみたいな職人や飲食店のオヤジにとってはあ〜ったりめぇのことよ。
甚さん! 甚さん! 図1ってすごいですね。これで飲食店における「ランチ定食」や社員食堂や牛丼が安い理由が理解できました。答えは、「食材の大量仕入れ」ですね!
皆さんも利用したことがある学食や社員食堂でも、これに似通ったデータを見ることができます。「A定食」や「B定食」です。あらかじめ、設定した「○○定食」をなるべく多くの学生や社員が食することを期待して、事前に大量の、1種類の野菜や肉や卵などの食材を仕入れることで、ボリームはあっても低価格の「定食」を提供できるわけです。
従って、図1のようなデータは、その大量な食材の「注文数」や「定価」を定めるのに必須です。
オメェは確か、CAEが得意って言っていたよな? 応力、熱、振動解析だけか? あん? コストはどうした? コストシミュレーションはねぇのか? コスト解析は、しねぇ〜のかってんだ。それでも技術者かってんだ! あん?
ド、どぉ……どうしよう!
べらんめぇ! 技術者の主要3科目を言え! こないだ教えただろ!
「Q(Quality:品質)」「C(Cost)コスト」「D(Delivery:期日)」!
オメェらだけだ。CもDも関心のねぇやつらは。あん? そうだろ? だから、また「CAEキー坊」って言われちまうんだろ?
甚さんーっ! “CAEキー坊”ともう呼ばないって約束したでしょーっ! それに僕らの範ちゅうでCもDもキチンと考えていますよ!
チッ、分かったよぅ。けど、それでもまだまだ意識が足りないんじゃねぇかーい? あん。そんじゃ、応力解析のようなカラフルで立派なデータで示せ! この円高だってよぉ、シミュレーションできたはずだろがぁ!
ムッ。屁理屈言わないでくださいよっ!
2人とも落ち着いて!
冒頭でも言いましたが、日本人技術者全体が、CとDへの意識が薄いようなのです。実は、この筆者自身もそうだったのです。かつて、勤務先が赤字になるとか、倒産することなど一度も考えたことのない、「ノーテンキ技術者」でした。
甚さんの言う通り。そして良君も、いまから意識を強めればいい話です。
そういうわけで、ここで今回の「目利き力」についての解説へと移りましょう。
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