日本アルテラは、東京・秋葉原で「アルテラ・エンベデット・サミット(Altera Embedded Summit)」を開催。オープニングセッションに登壇した日隈寛和社長の講演「ムーアの法則を超えて 〜Technology Convergence〜」の内容をお届けする。
2011年12月7日、FPGA大手ベンダー米Alteraの日本法人である日本アルテラは、東京・秋葉原で「アルテラ・エンベデット・サミット(Altera Embedded Summit)」を開催した。
本稿では、「ムーアの法則を超えて 〜Technology Convergence〜」と題し、登壇した日本アルテラ 代表取締役社長 日隈寛和氏のプレゼンテーションの内容をお伝えする。
1980〜90年代、多くの企業がFPGA/PLD分野に参入してきたが、2011年現在、数社しか生き残っていない。その理由について日隈氏は「単にシリコンアーキテクチャを追求するだけではなく、使いやすい開発環境を提供できることが重要。これを同時に提供できるベンダーが、現在のこの業界でのイニシアチブを取っている」と語る。
同社の場合、売上のおよそ18〜22%を研究開発に費やし、新製品の開発に注力しているという。そして、そのうちの50%を半導体ソリューションの研究開発に、残り半分を開発ソフトウェアツールの研究開発に使っているとのことだ。こうした戦略に基づき、製造プロセスの微細化による高集積・動作性能の向上・低消費電力化の推進、メモリ搭載製品の投入、FPGAとプロセッサコアの統合、PCベースの開発環境の提供など……、同社は数々のイノベーションを起こしてきた。中でも日隈氏は「2008年の40nm FPGAの供給、そして、2011年28nm FPGAの出荷開始」を特に大きな出来事として挙げた。
今現在、同社28nm製品のロールアウトが着々と進んでおり、ハイエンドの「Stratix V FPGA」が2011年4月から、ミッドレンジの「Arria V FPGA」が同年11月からそれぞれ出荷を開始している。またさらに、来年(2012年)初頭にローコストの「Cyclone V FPGA」の供給も予定する。その他にも、ARM Cortex-A9 MPCoreをハードIPとして集積する「SoC FPGA(Arria V SoC FPGA/Cyclone V SoC FPGA)」も発表済みだ(関連記事)。
こうした新製品が同社の売り上げをどのように構成しているのか、日隈氏は次のように説明する。「40nm、28nmで構成される新製品カテゴリと、60nmで構成される主力製品カテゴリが、2011年の第3四半期で、売上全体の約60%を占めるようになってきた。2010年以降、いかに早く60nm、40nm、そして28nmの製品がお客さまに採用されてきているかが分かる。実際、設計開始から量産に移るまでおよそ12〜24カ月かかる。そういう意味で、2008年に供給が開始された40nmの製品(新製品カテゴリ)が占める割合は今後も増えていくだろう。また、今年出荷が開始された28nm製品も期待できる」(日隈氏)。
同社の28nm製品は、アプリケーションや用途に適した形で提供されている。同社の28nm FPGAはTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Corp.)社の技術を用いて製造されており、最小のスタティック消費電力となる「LP(Low Power)」プロセスと、最高性能を発揮するための「HP(High Performance)」プロセスの2つの製造プロセス技術を採用している。「ローコストのCyclone VとミッドレンジのArria VはLPプロセスを採用している。どの製造プロセスを採用するかを検討する際、性能・消費電力・コストの3つのバランスを考える必要があるが、LPプロセスであれば消費電力とコストを抑えることができる。一方、ハイエンドのStratix VはHPプロセスを採用し、性能と消費電力を最適化している」(日隈氏)。
今後、半導体/FPGA業界がどのように変わっていくのか。日隈氏は「既に、数年前から転換点を迎えている」と話す。その転換点とは、“ASICを利用していた半導体ユーザーがFPGAに乗り換える”という動きだ。日隈氏は「FPGA/PLD市場ももちろん重要だが、ASIC/ASSPや組み込みプロセッサ市場のうち、FPGA/PLDで置き換え可能な市場(5兆8000億円規模)がそれ以上に重要になってくる」と説明。この市場の1%を獲得できれば、FPGA/PLD市場が10%成長することになる。
システムを実現するアプローチは幾つか存在するが、例えば、ASIC/ASSPのような特定アプリケーション向けのアプローチでは、「新しくチップを起こす場合、40nmプロセスを境に投下資本利益率(ROI:Return On Investment)に対する正しい判断が難しくなる」(日隈氏)。また、マイクロプロセッサやDSPを用いたアプローチでは「現在、高速性や高効率のニーズが出てきており、DSPの中にハードウェアアクセラレータを内蔵したりといった手法がとられている」と日隈氏。こうしたことを背景に、いま「シリコンテクノロジーがFPGAに収束してきている」(日隈氏)という。また、ご存じの通り、現在では組み込みプロセッサをハードIPとして集積するなど、FPGAは年々進化を遂げ、組み込み市場における存在感を強めている。
ただし、FPGAの進化だけでは最適なシステムを実現することはできない。そこで同社は2010年10月に、組み込みプロセッサとFPGAとを組み合わせたシステムの構築を容易に実現するための取り組みとして「エンベデッド・イニシアチブ」を発表。システム統合ツール「Qsys」の提供を開始するなど、シリコンテクノロジーの進化だけにとどまらない包括的な戦略を基に、組み込み分野におけるFPGAの適用範囲の拡大を狙っている。
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