ヒストリ/ノンヒストリCAD連携、ISO 26262対応、クラウド設計……設計・開発環境のトレンドまとめDMS2011レポート(1)(2/2 ページ)

» 2011年06月29日 11時30分 公開
[原田美穂,@IT MONOist]
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機能安全ISO 26262対応を急ぐ各社に向けた製品に注目

 ISO 26262は、車載の電子機器やソフトウェアなどに要求される構成管理・トレーサビリティ確保のために策定が進んでいるマネジメント手法体系。TS16949やAutomotiveSPICE、CMMIなどの従来の規格・プロセスモデルよりも一歩踏み込んだ具体的な定義が盛り込まれる見込みだ。年内には正式ISO化、数年で自動車OEM各社の完全な対応が求められるようになると予想される。こうした動向を受けて、従来、PDMソリューションを中核とした展示を行っているPLMベンダー各社ブースでもISO 26262対応サービス、ソリューション展示が目立った(注)。

注:なお、本稿では言及していないが、NECでも既にコンサルティングサービスを提供している


富士通セミコンが運用する仕組みを外販向けに作りこむ:富士通

 富士通では、前述のエンジニアリングクラウド展示のほか、会期前日に発表した「ISO 26262アセスメントサービス」についての展示があった。

 「ISO 26262アセスメントサービス」は富士通、富士通中部システムズ、デジタルプロセスの3社で進めるサービスで、既に、富士通グループ内では自動車搭載用半導体も手掛ける富士通セミコンダクターで運用しているという。現在提供しているアセスメントサービスのほか、今後は富士通の統合BOM「PLEMIA M3」でのISO 26262対応も視野に入れて調整を進めているという。

 「今秋にも正式にISO化される見通しだが、影響範囲が広範な上、大量のドキュメントや定義を詳細に理解しなければならず、各社ともどこから手をつけてよいか分からず困惑している状況。自社およびグループ内でノウハウを蓄積しつつ、実際の自動車OEMメーカーとも意見交換しながら(対応ソフトウェアを)作り込んでいる」(ブース説明員)

航空業界で実績あるRequtifyでボトムアップ導入を推進:ダッソー・システムズ

 ダッソー・システムズでも、ISO 26262で求められる要求管理に対応する製品として「Requtify」が展示された。

 Requtifyは、要求管理・伝達のためのソリューション。ソフトウェアの用件定義やドキュメントの変更情報を管理し、トレーサビリティを確保するもの。ソースコードやドキュメントに簡単なタグを入力してリポジトリにアップロードするだけで自動的に管理するため、実現場のプログラマへの負担が少ない点が特徴。航空業界での機能安全はD178b/DO254で定義されており、これにも対応している。

 「この製品はエアバスのA380開発用に作られたもの。自動車以上に厳しい品質管理が求められる航空業界で実績がある。また、要求管理ツール『Rational DOORS』など主要なソフトウェアとの連携も可能」(ブース説明員)だという。

 「なによりも大きなアドバンテージは、いますぐに導入して使えること。ゼロからシステムや業務プロセスを変更する必要がない。漸次的に適用していけるため、現場負担がなく、ISO 26262本格適用が見込まれる2014年までに徐々に移行すれば済む」(同)

 このほか、ダッソー・システムズブースではV6プラットフォームの特徴でもある、3次元CADデータとCG制作環境のシームレスな連携についてもデモ環境を用意していた。

 2009年のDMS展では、富士通/デジタルプロセスのブースでCADデータからのダイレクトなCG向けデータ生成のデモが行われていたが、ダッソー・システムズのV6が目指すものはこれとは異なるもののようだ。富士通/デジタルプロセスの展示では自動車開発の最終工程でのプロモーション素材やカタログ製作のリードタイムを大幅に短縮しようという意図のものだった。一方のダッソー・システムズのV6が描いているのは、意匠デザイナがより深く機構設計者とコミュニケーションを図っていき、マーケティングおよびフロントローディングを推し進めていこうという意図があるようだ。

 どちらも、開発リードタイム短縮と効率化を目指したものだが、訴求アプローチの違いが興味深い。

CADデータ 下のCGデータ生成の元データ。CGデータとCAD図面を行き来して形状の検討を行える
CGデータ CGデータで背景や光沢などを含めた視覚イメージの検証が可能。背景なども市街地、夜間の街頭照明、室内照明などが標準で用意されており、光の反射状況を含めた検証が可能だ

社内外、国内外の進捗を掌握するプロジェクト管理

 事前情報で紹介したクラウドを活用したプロジェクト管理ソリューションの展示に注目が集まった。直前レポートでも紹介したように、同社の需要予測製品などを採用した担当者による在庫削減・欠品削減の取り組みについてのセミナーは非常に興味深い内容だったので、後日あらためて詳細を紹介したい。

「OnSchedule」 プロジェクト管理・情報共有向けクラウドサービス「OnSchedule」。展示説明者の首元のストラップにも注目
頑張ろう東北 がんばろう東北のメッセージ
事前取材で主催者であるリード・エグジビジョン・ジャパン 島田周平氏も語っていたように、今回の展示ブースは日本企業の復興を願うブースメッセージも見られた。仙台に拠点を置く日立東日本ソリューションズのブースでは、スタッフが「がんばろう東北」のメッセージを記したストラップを付けていた

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 ここまでで、設計・開発環境に向けた各社の動向を紹介した。次回は、生産部門の効率化や基幹システムに着目してトレンドを紹介する。

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