2010年、アイスランドのエイヤフィヤトラヨークトル山が大噴火を起こしました。この噴火の影響で、欧州を中心にロジスティクスの混乱が発生しました。
このときもグローバルでプロセス標準化を実現していた企業とそうでない企業とで、大きく対応スピードが分かれました。ここではその例を紹介しておきましょう。
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アジアで製品を作りEUで加工し販売しているある企業がありました。
噴火に伴う空港の閉鎖や航空便の欠航のため、航空輸送が混乱し、多くの製品、部品が止まってしまう事態となりました。
このとき、この企業では顧客から問合せのあったものが、いつ、どうやって届くのかが分からなくなってしまったのです。
アジアの工場に問い合わせても、工場は出荷しただけで、その後の管理にはあまり責任を持っていないので分からないといいます。EUの現地ロジスティクスチームに問い合わせをしても、現地は混乱の渦中で誰も対応する余裕がない状況でした。
この企業では、以前は日本国内から世界各国に輸出していた時期もありました。そのときはある程度、モノの流れが見えていたといいます。
しかし、日本からアジアへと生産拠点の比重が変わっていく中で、日本、アジア、EUそれぞれでロジスティクスの仕組みを標準化してこなかったのです。
それゆえに、いくらEUのシステムの中をのぞいても、現状が把握できないという事態が起こってしまったのです。
この企業では、結局、EUのメンバーが時間が空くのを待って、現地のメンバーに頼んで調べてもらうしか手だてが見つかりませんでした。
現地は忙しく、レポートをまとめている時間などありません。日本側はその時間に英語のできるメンバーを用意し、電話で現地の回答を聞き取って報告書をまとめるしかありませんでした。
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もしも、この企業がグローバルに共通で使えるトラッキングシステムを装備していたら、ここまでの手間は掛からなかったことでしょう。
こういう機能を装備するためには、グローバルレベルでの標準化が前提条件となります。
この企業では、辛うじて確保できた輸送スペースに何を載せるかも議論になりました。グローバルで国をまたぐオーダーに優先順位が付けられないのです。顧客の層別もできていませんでした。
結局、後々振り返って検証してみると、本当に必要なものが優先的に輸送されていなかったことが分かったのです。今回の調査でも、効果的なリスクマネジメントを阻む主な障害として、「プロセス標準化の遅れ」や「ガバナンス問題、利益相反」といった組織上の課題が挙げられており、本来管理すべき事項が管理しきれていない悩みが浮かび上がっています。
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