シーメンスPLMソフトウェアは2010年11月2日、機械設計ツールの新製品「Mechatronics Concept Designer」(以下、MCD)に関する記者発表会を開催した。同製品は2010年9月14日(現地時間)に米国で先行発表されたもの。本発表会は同年10月28日〜11月2日まで行われたJIMTOFの同社出展(SIEMENSブース内)と合わせて開催した。MCDは、PLM「Teamcenter」と連携し、3次元設計ツール「NX」上で起動する形となる(ともに同社製品)。
MCDは、従来、2次元図面や手描き図で構想をしていた部分をデジタルデータに置き換え、機械設計の技術要件(形状や寸法)だけではなく、回路設計や制御設計(電子部品やカムの動作情報など)、ソフトウェアの技術要件も含めて設計初期段階で管理・共有しようという製品だ。
従来の工作機械設計では、機械設計や回路設計、制御設計、ソフトウェア設計など、各分野の詳細設計は並行して進行ができなかった。使用している設計ツールがそれぞれ異なり、データ交換が直接できないことが大きな要因だ。それぞれの分野の技術要件をMCDで共有することで、並行して詳細設計の作業が進められ、変更個所や設計が進展した個所についてはそれぞれがMCDに戻していく。MCDに共有された技術要件は再利用ライブラリに蓄えられ、他機種の設計などに流用していくことも可能だ。
構想段階の単純な3次元モデルに、機械の動作条件を設定しておくと、動きのシミュレーションが容易に行える。シミュレーションは、ゲームのグラフィックスで多用されるNVIDIAの物理エンジン PhysX(フィジックス)の技術を採用した。機械設計者以外の技術者に説明する際は、2次元の図面で説明するよりも3次元モデルによる動作シミュレーションで説明した方が確実に伝わりやすいという利点がある。レビューをスムーズに進めることができ、設計にまつわる決定・承認も素早く行える。
この仕組みを導入していけば、特に詳細設計の際、各分野のコミュニケーションのロスが大幅に減り、設計の問題や矛盾が早期に発見しやすくなることで、開発工数を削減できると同社はいう。
この製品の導入を検討するユーザーは、従来の設計プロセスを大きく修正し、完全な3次元設計へ移行する必要があるが、導入の際は同社のサポート部隊による操作教育を受けられる。
このシステムのターゲットは、工作機械・製造装置メーカーとしているが、今後も(ユーザーのニーズ次第で)機能を拡充させることで他分野の設計への対応も検討したいとのことだ。
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