ここからは、プロジェクトで策定した計画に対して、どのようにして状況を把握しているのかを掘り下げてみます。
いかに早いタイミングで、不具合発生の予兆や進捗遅れを察知するか、といった視点でいろいろと工夫されています。どのような細かさで、どこまで/どのような頻度で監視するか、また報告する側とされる側での観点の相違など、いろいろと調整されているようです。
監視を行う「細かさ」については、以下の2つの発言が多く挙がりました。
作業には成果物が付きもの。その成果物の単位で報告する | ||||
成果物を作成するための作業項目まで計画し、その状況を報告させる | ||||
具体的ではないですが「計画を策定した細かさ」ということになります。つまり、担当者のスキルレベル、作業の難易度などを考慮し、プロジェクトの状況を把握できる粒度までブレークダウンし、計画を策定することが重要です。
次に監視の「頻度」ですが、以下を併用して監視しているようです。
週次での会議や週報の提出を行っている | ||||
毎日、朝会を実施している | ||||
毎日、朝会を実施している組織がこれほど多いのかと、正直驚きました。週次と日次での監視内容の違いは以下のように切り分けているようです。
週次:成果物単位での進捗の状況を把握 | ||||
日次:成果物を作成していく作業の中での問題点、課題、リスクなどの意見交換 | ||||
また、とかくプロジェクトの中で最も負荷の掛かりやすいプロジェクトリーダー、チームリーダーは、こんな工夫をしているようです。
1つの成果物作成や作業の実施期間の中で、監視の間隔を変化させていく | ||||
作業担当者によって監視の細かさとタイミングを分けている | ||||
1つ目は、特にプログラム作成やテストなどの比較的下流の工程で、ある程度までは担当者に任せて週次で監視し、作業が佳境に差し掛かったら日次で監視を行う方法などです。
2つ目は、リーダーは公言しないですが、細かく管理しなければ危険な担当者と、任せておいても大丈夫な担当者で、異なる管理を行うことです。
また、報告する側とされる側での観点の相違を埋める手段としては、
オーバヘッドをできるだけ小さくして、多段での進捗確認を行っている | ||||
との発言がありました。
担当者→チームリーダー→上位リーダー・マネージャー→上級管理者層・経営層という多段でのプロセスでは、各層間での情報のつながりの論理性、客観性などに関して、もう一度検証してみると、より精度の高い状況把握に近づくのではないでしょうか。
それでも、プロジェクトの状況がなかなか見えてこない理由の1つとして、以下のような意見が聞かれました。
自分に不利益と思える情報を上げてこない可能性がある | ||||
これは、プロジェクト管理のみで解決できることではなく、評価制度や、組織の文化・風土などにも関連してきます。リーダー、マネージャー層の方々は、プロジェクト管理の真の目的を地道に現場に説き、“包み隠さずに見せることが当たり前”の文化・風土・人づくりを行っていくことが重要ではないでしょうか。また、進捗の可視化や会議などの方法を工夫し、自然と見えるようになる仕組みや、工数や進捗率などの数値の情報ではなく、生の情報を吸い上げる場や仕組みを構築していかなければなりません。
参加者の皆さんは、対象としているシステムや、プロジェクトの規模もまったく異なります。ですが、計画策定や進捗監視に関しては意外にも共通部分が多くあることを感じさせられました。
CMMIをベースにしたプロセス構築に当たって、「小規模では難しい」などの発言をよく耳にします。ですが、すべてとはいいませんがCMMIが述べているプロセスの本質は、プロジェクトの規模には左右されません。
CMMIのレベル認証は非常に大変だったが、すべてを一度実践してみたことが、現時点で非常に有効である | ||||
これはある参加者の発言です。自分たちに適したプロセスを構築するうえで、プロセス実施の目的、プロセスの本質を理解することが重要であり、基本であることを、あらためて認識させられました。次回のテーマは「決まらない要求の開発と管理」です。ご期待ください。(次回に続く)
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