Objet社のEdenは、頭が頭蓋(ずがい)でつながってしまった双生児の剥離(はくり)手術の際にも活躍したそう。子供たちの神経や血管はお互いに複雑に絡んでいて、手術の際、少しでも手元を誤れば、命が危ないといわれた。そこで、頭蓋のCTスキャン映像からSTLに変換し3次元データを作成した後、3次元プリンタで頭蓋形状を詳細に3次元出力。そのサンプルを用いて、綿密な打ち合わせとシミュレーションを重ねてから、手術に臨んだ。その結果、手術は見事成功!
「Objet」という名前は、「Object」(物体、目的)、「Jet」(噴射)の2ワードを合成した造語。まさに「ポリジェット方式で物体を造形する」、同社製品そのものの特徴を表す。 そんなObjetの本社CEO ダビッド レイス(David Reis)氏も、DMS会場を訪れていた。今回はせっかくの機会なので、同氏に(少々直球な!?)質問を投げかけてみた。「Objetの3次元プリンタで、もっともっと小さい機種が派生する可能性はあるのですか?」。
同社のデスクトップ製品「Alaris30」のサイズは、87×86×104cm(幅×高さ×奥行き)。デスクトップとは、つまり「机の上に乗ること」。このサイズでも、ラックや作業台などの上には乗る。さらに欲をいってしまえば、仕事をする事務机に乗せてもスペースを圧迫しないで済むサイズになれば、もっと身近なものとなりそうだ。
「可能性ありますよ! あと10年で、いまのインクジェットカラープリンタ並みに小さなCONNEXが登場すると考えています。……というのは、その実現が技術的に何ら難しくないからなのです。当社のCONNEXは、今日普及するXY軸のインクジェットの仕組みにZ軸が単に加わって、噴射されるのがインクからポリマー(UV硬化樹脂)に置き換わっただけ。それに、3年前までは当社が扱っていたのがヘッド8本の製品(CONNEX)のみだったけれど、いまは2ヘッドの製品(CONNEXをローエンド化したAlaris)があることからも、当社の3次元プリンタの進化スピードがいかに速いかが分かるでしょう?」(レイス氏)。
さらに、こんなこともレイス氏は述べた。「その数年先(約15〜20年後以降)には、2次元と3次元ともに出力可能な1台も登場するでしょう」。
いまは企業内のユーザー自身が使うために購入するケースがぐっと増加しているとのこと。さらにこの一歩先の段階、ホームユースの可能性についても聞いてみた。
「もちろんあります。15年ぐらい先には、例えば、Web上にあるモデルデータを引っ張ってきて、自宅の3次元プリンタで子供のために(玩具などを)出力する、という用途も出てくるでしょう」(レイス氏)。
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次回のDMS2010レポートでは、CADやCAEのベンダを中心に紹介する。
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