光造形装置メーカー シーメットのブースも、同社の造形装置「NRM-6000」ばかりでなく最新の造形材料情報を目当てに訪れる人が多いとのこと。同社の開発したじん性のある光造形用樹脂「TSR-831」については去年のレポートでも紹介したが、今年の展示では、さらに進化した材料を発表。
今回出展の目玉は、2010年7月中に市場投入予定の「TSR-839」。「透明な(透過性が高い)光造形材料は、強度そのものは高かったものの、じん性が高いものがありませんでした。例えば『TSR-829』(透過率90パーセント以上)では、タップを通そうとすると、パキパキと折れてしまうような状態です。今回展示したTSR-839は、タップを通しても割れません。衝撃試験のサンプルにも使っていただけます」(同社)。
0.5mm厚のシート状に造形したサンプルに手を触れると、ビニールのようなしっとりとした感触があり(湿っているということではない)、じん性の高い材質であることが分かる。
ブースでは、TSR-839とTSR-829の0.5mm厚シートをそれぞれ用意し、写真7のような器具で500gの鉄球を落下させる実験を実施。TSR-829は案の定、見事に木端微塵(こっぱみじん)になってしまったが、TSR-839はぐにゃりと変形することで衝撃を吸収した。
透明耐熱樹脂「TSR-840X」についてもデモ展示した(流れ可視化モデル)。
米ハンツマン(Huntsman)社の高強度アンチモンフリー光造形用樹「RenShapeSL78」シリーズ、光造形用データ生成・装置管理ソフト「C-SIRIUS(シリウス)」も併せて展示した。
イスラエルの3次元プリンタメーカー Objet Geometries(以下、Objet)社の3次元プリンタはアルテック、ファソテックの2社のブースで展示した。
アルテックは、日本図学会が主催した「第3回 デジタルモデリングコンテスト」の作品「設計演習用空気圧縮機」を展示した。以下の写真は、その優秀賞作品。機械設計の授業の際、カム機構の基本的な働きや構成を理解させやすくするために作られたものとのことだ。アルテックとファソテックは、本コンテストにおける応募モデルの試作に協力している。
先取り突撃! DMS2010「ブースにモノづくり生現場が出張してくる!」でも紹介したアルテックの自由に試作品に触れられるコーナーも盛況だった。
先取り突撃! DMS2010「2種類の材料でリアルな試作ができる3Dプリンタ」で紹介したファソテックは、同社顧客である松村設計(本社 東京大田区)の造形サンプルを展示した。写真11は「Eden」による造形サンプル(塗装品)だが、奥に見えるかわいらしいキーボード(アリスのキーボード)は、モックアップではなく、電装基板が内部に仕込まれ、しっかり機能するモデル。
松村設計は、スキャニング、機構設計、解析、3次元造形まで一通り対応している。
「CONNEX」のサンプルの中でひときわ目立つ人体モデルシリーズ。(いろいろな意味で)パワーアップしたサンプルが、以下の写真12。ここには常に見物する人が誰かしら張り付いている状態で、撮影タイミングを狙うのも一苦労。ここに人が集まる理由は、具体的な理由、生理的な理由、さまざまだろうけれど……。ともあれ、診察や手術など医療現場での3次元プリンタ活用が増えてきているという一例の展示である。
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