シーメンスPLMソフトウェアは2010年6月15日、新テクノロジーフレームワーク「HD-PLM」および統合3次元CAD/CAE/PLM新製品「NX7」に関する日本向け記者説明会を開催した。両システムは2010年5月に開催された上海万博で公開したもの。
同社のいうHD-PLM(High Definition Product Lifecycle Management)は、製品ライフサイクルにまつわるすべての意思決定が3次元モデルを核にした1つのフレームワーク上で行えるシステム。企画から設計・開発、製造、営業まで絡む膨大な情報から、自分の必要な情報のみを迅速かつ直感的に選択できるという。新製品のNX7にもこのHD-PLMを実装し、同社のPLM「Teamcenter」と連携する「HD3D(High Definition 3D)」を実現。例えば3次元CADを使う設計者が、自分の設計した部品が製造や営業、サービス業務にどう関連するか、画面の3次元モデルを見ながら把握することができ、逆に設計以外の企画や営業担当なら製品カタログやサービスマニュアルなどから、関連する部品の設計データの状況を追いかけられる。
このHD3Dの仕組みは、アップルの携帯端末iPadやiPhoneに対応している。例えばiPadからプロジェクトリーダーが作業指示を出し、iPhoneを持つ現場の技術者がそれを受け、3次元モデルを見ながら作業に当たるといった応用が考えられる。この際、逆に現場の技術者のiPhoneからリーダーの持つiPadに作業完了の報告を送ることも可能だ。
NX7のCAD機能では、シンクロナステクノロジ関連機能を強化および拡張し、モデリングの手数を大幅に減らし、旧バージョンと比べて50%モデリング時間を削減したとのことだ。この技術は、CAEとCAD間のデータ交換で、解析に適した形状に修正する際や、解析結果を設計形状に反映する際にも役立つ。
NXの従来機能「再利用ライブラリ」では3次元の部分形状や2次元スケッチのパターンなどをクリップボードのように保管し、ドラッグ&ドロップでモデリング画面上に取り出すことが可能だが、NX7ではその機能をさらに拡張。再利用可能なデータタイプを増やし、部品取り付けのための形状を自動付加する機能も追加。また「製品テンプレート機能」では、ロジックツリーを組み込めるようにした。
また自由曲面の形状作成もシンクロナステクノロジを利用して行え、サーフェスモデリングとソリッドモデリングの機能を行き来せず済むようにした。「フェースファインダ」という機能では、曲面形状の関連性を作成でき、なおかつそれを保持できる。
他種のCADから取り込んだデータには、後から設計意図が付加可能だ。例えばインポートデータではブレンド形状が正しく認識されないことがあるが、NX7では自動あるいは半自動で、ブレンドや面取りなど製造でよく使用される形状の関連性認識をサポートしてくれる。
前回保存した状態から寸法・注記の修正個所を特定して抽出し、図付きのレポートを作成する機能も追加。作成されたレポートからは、設計データ(3次元モデルや図面)の変更個所へナビゲートする。修正前後の図を重ね合わせることができ、直感的に変更個所を把握可能だ。
新たに追加した「PMI軽量データ断面ビュー」は、容量が大きくなりがちな断面データのボリュームを最小限に抑えることができる。PMI(製品製造情報)検索を利用して、設計初期段階で公差チェックも可能だ。3次元測定機で採用されるアプリケーション「CMM(Inspection Programming)」も採用し、検査対象の3次元モデルやPMIを基にして測定パスが自動生成可能だ。
ほかCAM関連機能の情報としては、自動加工プログラミングの強化、ターボ機器設計機能の追加など紹介した。
日本での販売については、同社製品を扱う代理店が準備出来順次出荷されるとのことだ。
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