フィードバック制御をしているからといって、すべてを目標値にできるわけではない。例えば車が風にあおられたときは?
銀二(ぎんじ)
設計コンサルタント。甥(おい)っ子の草太を自分の息子のようにかわいがっています。
草太(そうた)
銀二の甥。現在は大学院生です。ちょっと困るとすぐ叔父を頼ってしまうちゃっかり者だけど、頑張り屋さんです。
編集部注* 本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。
今回の舞台は、瀬戸内海を見下ろせる叔父さんの書斎。窓からは、晴れ渡った空の下、明石海峡大橋を眺めることができます。その下を外国航路の大きな船が忙しく行き交っています。草太は休みを利用して叔父さんの家に遊びにやってきました。ついでに自動制御の静特性について教えてもらうことにしたようです。
叔父さんのお陰で、フィードバックシステムでは、なぜ不安定となるかが分かったよ。今日は、叔父さんがいっていた、自動制御の3大特性である、安定性、静特性、動特性の中の静特性について教えてもらおうと思って、東京からはるばるやって来たよ。それにしても、この部屋の眺めは抜群だね
そうだろ、そうだろ。ここで暮らしていたら、東京に住みたいなんて思わなくなるよな
そういえば、叔父さんはもともと神奈川県の出身だもんね。お父さんがいってたんだけどさ……
そんな昔の話はいいとして……。早速、静特性について考えてみようや。今度もいままで説明してきた車の自動運転制御システムを題材にして考えてみようか。車体は走行中に横風による力を受けるとしよう。図1はその制御構成だ
図1の中の『横風による操舵(そうだ)角のずれY2’』というのは、車が横風を受けて、進みたい方向とずれていってしまう、ということだね?
そうやね。だから風がなければY2’=0だ
風が吹いていなければ、ステアリングによる操舵角はY2だけど、風によって操舵角がY2’だけ少なくなるってこと?
車を直進させているとき、操舵角Y2は0だ。だけれど、真っすぐ運転しているつもりでも車は風によって、どんどん曲がっていく。風によって曲がる量を操舵角に換算するとY2’ということや。普通、角度の符号は反時計周りを正にとるから、操舵角は風によって時計周りにわずかに回転していることになる。つまり車は右方向へどんどんずれていくってわけだ
しかし、フィードバック制御をしているから、車は直進する
おっとどっこい、それがそうもいかないんや
なんで? それじゃ、フィードバック制御の意味がないじゃん!
フィードバック制御してるから、すべて目標値に制御できるってわけでもないんやで
この話が今日のテーマの静特性につながるんだね
静特性というのは、その名のとおり、静かな状態での制御特性ってことなんだが、この『静』というのは、別に音が静かっていうことじゃなくて、目標値が変化しないってことを意味しているんや
目標値が変化するときを『動』、変化しないときを『静』と表現したわけだね
そういうことやね。だから、今回の話は、図1の自動運転制御システムで走行している車が……
の2つから構成される
うん、うん
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