ここから、MONOist編集部がOESFブースで注目した、各ワーキンググループの最新の取り組み、展示・デモンストレーションの模様などについて紹介する。
OESF STBワーキンググループに所属するKDDI研究所は、IPTV(Internet Protocol Television)とVOD(Video On Demand)に対応したAndroid搭載STB(MIPSコアを採用したプロセサを搭載)の展示・デモンストレーションを行った。
近年のSTBは、HD(High Definition)へのシフトや、FMC(Fixed Mobile Convergence)との連携、アプリケーションの多様化など、開発コストが増大の一途をたどっているという。今回、KDDI研究所では、こうした課題を解決する1つの案として、Androidを採用したSTBと携帯電話によるアプリケーション/コンテンツの連携について模索し、その試作機を開発した。
STB向けのフレームワーク、デコーダなどに加え、STBメニュー、VOD、IPマルチキャストなどのアプリケーションを開発することで、携帯電話向けのAndroidをSTB向けに拡張したという。展示会場では、KDDIの通信網を使用したIPTVやVODのコンテンツの再生デモンストレーションを実施していた。
また、アプリケーション/コンテンツの連携の一例として、Androidケータイ向けのゲームアプリケーションをSTB上で動作させるデモンストレーションを行ったほか、近距離無線転送技術「TransferJet」のドライバ、アプリケーションを実装することで、STBと携帯電話のコンテンツ連携を実現するデモンストレーションも行った。「コンテンツの連携という点から、TransferJetによるデータ送受信機能を試作した。例えば、携帯電話で撮影したHDコンテンツをリビングの大画面で家族と視聴するといった利用が可能となる」(説明員)。
また、「Androidを共通プラットフォームとして用いることで、STB、携帯電話というデバイスの違いを問わず、1つのアプリケーションを開発するだけで、双方で利用することができる。そのため、開発コストの削減に貢献できる。また、ユーザーにとってもシームレスなコンテンツ/アプリケーションの連携が可能となり、利便性が向上する」と説明員は語った。単にTVが見られる、ビデオが見られるという従来のSTBが、Androidを搭載することにより、Webブラウジング、マルチメディアプレーヤ、ゲームや地図アプリケーションなどの実行環境として、そして、モバイル環境とのデータ相互連携を実現するプラットフォームとして新たな変化を遂げるかもしれない。
関連リンク: | |
---|---|
⇒ | KDDI研究所 |
続いて紹介するのは、VoIPワーキンググループの取り組みだ。VoIPワーキンググループでは、Androidアプリケーションから自由に音声/画像通話が行える標準的なAPIを提供すべく、SIP(Session Initiation Protocol)スタックやNGN(Next Generation Network)スタック、各種コーデックなどを整備し、統合、フレームワーク化することを目標とし活動を行っている。
展示会場では、VoIPワーキンググループに所属するソフトフロントが、単なるIP電話の実現だけではなく、未来のビジネスフォンのあり方、実際のビジネスシーンをイメージした試作機による展示・デモンストレーションを行っていた。
VoIPワーキンググループでは、ソフトフロントのSIPライブラリ技術と、展示会向けに作成したピザの注文受け付けアプリケーションとを組み合わせた出前受け付けシステムの試作機(北京智器のMID端末「SmartQ 7」を利用)を展示していた。
電話を受け付けると、発信元情報を表示(氏名や特記事項など)。そして、ピザの注文画面に遷移し、注文を確定すると、顧客情報と届け先の地図、注文内容がプリントアウトされるというもの。「Androidのアプリケーションフレームワークを拡張するだけで、電話機能の知識がなくてもすぐにこういったシステムが作れる」(説明員)。
動画1 出前受付システムのデモンストレーション |
ちなみに、ET2009に向け、より実機(ビジネスフォン)に近い、Android搭載タッチパネル式IP電話機に実装する予定だったが、残念ながら間に合わなかったそうだ。しかし、通話機能を備えた組み込みシステムの試作として非常に面白い展示・デモンストレーションだった。「今回は出前のシステムだったが、例えば、カラオケの操作端末に、こういった新しい機能を組み込むことも簡単にできる」と説明員。通話だけでなく、ネットワークやデータベースとの接続・連携が簡単に行える点もAndroidの大きな魅力の1つといえるだろう。
関連リンク: | |
---|---|
⇒ | ソフトフロント |
Network & Securityワーキンググループは、IPv6(Internet Protocol Version 6)、VPN(Virtual Private Network)、SNMP(Simple Network Management Protocol)などのネットワーク、およびセキュリティに関する共通要素・コンポーネントの標準化/開発を進めるワーキンググループだ。
ここでは、OKI通信システムが行ったNGN網を介した映像配信制御の展示・デモンストレーションについて紹介する。
OKI通信システムは、Androidを搭載した映像配信コントローラ(アットマークテクノの「Armadillo-500 FX」)に、IPTV−VODテストコントローラ アプリケーションと、NGN−SIPライブラリと、IPTV−VODライブラリを実装。SIPプロトコルでNGN網にあるSIPサーバ(NGN検証ツールキット)との接続を確立し、映像配信サーバにある映像を映像受信端末に配信するというもの。
映像の再生/一時停止などの制御にRTSP(Real Time Streaming Protocol)を使用しているほか、どの映像をどの映像受信端末で表示するかを映像配信コントローラで制御できるという。
関連リンク: | |
---|---|
⇒ | OKI通信システム |
⇒ | アットマークテクノ |
⇒ | Armadillo-500 FX |
以上、OESFのビジョンと展示・デモンストレーションの一部をお届けした。後編では、組み込みシステム向けAndroidディストリビューション「OESF Embedded Master」への取り組みや、軽量版Android、カーナビへの採用事例などを紹介する。(後編へ続く)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.