創業して55年の昭和製作所は日本で唯一、日本工業規格(JIS)規格で認められた非破壊検査用試験片を製作する会社。試験片(テストピース)は、部品の傷の限度を判定する際に基準となるもの。つまり、医療の世界では標本に当たるだろうか。試験片の製作では、部品の置かれたさまざまな条件を忠実に再現する。その再現には高度な加工技術と柔軟なアイディアが要求される。
同社が今回展示したのは、部品の内部にできた傷用の試験片で、これまでは忠実な再現が不可能だといわれていた。板を張り合わせて作ろうとすれば、熱をかけることになるため、材料の分子構造が大きく変わってしまう。そこで同社は融点より少し低い温度で材料を溶着することで、金属組織をほとんど変えることなく試験片を製作する技術を開発した。この微妙な温度コントロールが鍵だという。焼き戻しで生じた曲がりを冷間ではなく加熱によって戻すなど、難加工を得意とする同社ならではのテクニックだ。
超音波検査(エコー検査)といえば、母体内の新生児の様子を観察するときなどが思い浮かぶ。ご存じのとおり、エコー検査もまた機械の世界でもおなじみだ。
日立エンジニアリング・アンド・サービスは同社で開発した超音波映像装置「FineSAT」を展示した。半導体や樹脂部品の内部の傷やボイド(空泡)を超音波で検出し映像化する装置。超音波が音響インピーダンスの異なる材料に当たると反射する原理を応用し、X線や顕微鏡で検出できないすき間を検出できる。同機に付属する高分解能プローブは、日立が開発したもの。
また自動判定機能や付属の解析ソフトを充実させることで、幅広い用途に利用できるようにしているという。
ほかには3次元計測システム「FMレーザレーダ」も展示した。
最後に、日本非破壊検査協会のブース展示「検査装置の歴史」の一部を紹介する。製造年を見てよみがえってくる思い出は、何? それとも、あなたはまだ生まれていない!?
展示中で最も古い装置は菱電湘南エレクトロニクスが提供した昔の超音波探傷器「FD-5C」で、今日の超音波探傷器の原型となったもの。同社が所有する最古のものだという。この装置は1961年で、オバマ首相と同じ年ということになる。
これらの中には、新しい方式が開発されたことでもう本格的に使われなくなった装置もある。今回の記事で紹介した検査装置のどれかも、30年後には使われていないかもしれない……。
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