経験も個性もそれぞれな4校について、チームのこと、設計のポイントなどを紹介。学生たちを裏で支える修理工房も登場!
前回に引き続き、今回も第7回 全日本学生フォーミュラ大会の様子をお伝えしていく。書類選考を通過した66チーム中、今大会に出場したのは63チーム。ここのところの不景気も、学生のエントリー数にはあまり影響がなかったという。
今回は上記を代表し、大会経験も個性もそれぞれである大阪大学、静岡理工科大学、横浜国立大学、工学院大学の4校について、今年のチームのこと、車両設計のポイントなどを紹介させていただく。なお今回は、その学生たちの活躍を裏で支える「修理工房」のスタッフにもお話をお伺いした。
「設計では、昨年の結果のデータをいろいろ活用しました。また今年は、オートクロスやエンデュランスのような周回走行で、早いタイムが出せる車両を目指しました」と大阪大学のチームリーダー 池内 祥人さんはいう。
「ブレーキの踏みやすさを考慮し、コーナリング中もしっかりと準備できるようにしました。例えば、ブレーキの横に足置きがあって、コーナーを曲がったときにそこに足を掛けて突っ張れるようにしてあります。サスペンションやタイヤの角度も最適な条件になるようにしました」(池内さん)。
今回の車両は、Kawasakiのスーパースポーツバイク「ZX-6R」の600ccエンジン(ZX600P)を積んでいる。しかしエンデュランスなどコーナー走行が多い審査では、そのパワーは残念ながら完全には生かせない。「大きなパワーの動力の下、アクセルの反応をどこまで滑らかにできるか。それはコントロールが難しい部分だと思います。エンジンのECUのデータを調べ、車両実機の馬力も調べ、アクセルの踏みやすさを検討しました」(池内さん)。
同校は、解析ソフトウェアも前向き活用している。「吸気系、排気系まで、GTパワーや、だいたいの馬力トルクのピークを調べ、ピークをどこに持っていくのが最適かを流体解析ソフトウェアを使い検討しました。3次元CADと連携する流体解析のソフトも併用しています」(池内さん)。同校ではGTパワーを検証するなら1次元で、車両全体が対象になれば3次元で、というふうに使い分けている。解析ソフトウェアの操作については、学校の授業では習っておらず、フォーミュラ活動で習得したという。
「今回のエンデュランスは、接地について少しトラブルがあり、何とか走り切ったような状況でした。また冷却系が不十分で、あまり攻めすぎるとオーバーヒートしてしまう感じでした」 (池内さん)。
残念ながら、配点の高いエンデュランスで車両の本領発揮ができなかったという大阪大学だが、それにもかかわらず今回は総合4位という好成績だ!
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⇒ | 大阪大学「OFRAC」 |
大会開催地(袋井)にある静岡理工科大学の車両は、単気筒スーパーチャージャやMRダンパの実装が特徴。今回は足回りをカーボンでまとめ、アッテネータ(減衰器)をダンボール製にしてみるなど各部材の軽量化に徹底的にこだわった。
カウルデザインは今年、姉妹校である静岡デザイン専門学校に依頼したそう。製作も手伝ってもらったという。「彼らはスタイルCADを使っています。私たちの使っているソリッドのCADでは複雑できれいな曲面を出すことが難しいですよね」と静岡理工科大学 チームリーダーの矢部 洋介さん。昨年のカウルはやや角ばった形状をしていたが、今回は先端に向けて細りながら、丸みを帯びていくようなロケット風な形状をしている。
「カウルの型製作に『スタイロフォーム』という断熱材を利用しました。その型でFRPを積層します」。スタイロフォームは住居の断熱材としてよく使われるが、安価な部材で、軽くて丈夫なことから、鳥人間コンテストの機体の構成部品にもよく使われることで有名。
3次元スタイルCADで形状を起こし、断面をプリントアウトし、それを基に型を作ることで、カウルの制作時間は昨年比で半分ぐらいになったという。
「今回から、3ペダルです。手のクラッチが使いづらいのでは? という意見が前々から出ていました。レギュレーションの改正でコクピット開口部が広くなり、足元のスペースが広くなったので、クラッチを足元に持ってきました」(矢部さん) 。
このように同校は、さまざまな工夫を凝らし、車両性能を高めて大会に挑んだにもかかわらず、車両の調子がいまいちとのこと。
「車両は4月と早い時期に完成したのですが、3ペダルの仕様をちょこまか変えてしまったことで、ドライバーが車両の操作に慣れることができず、セッティングも詰め切ることができませんでした」(矢部さん)。乗りやすさを目的としていたのに、逆に乗りづらくなってしまうという皮肉な事態に……。前回、静岡理工科大学は総合12位だったが……今回は結果振るわず総合36位。そうはいっても、今年もエンデュランス完走できたのだし、来年は万全なセッティングで頑張って!
「マシン自体が速くても、ドライバーが慣れなければ駄目ですよね。ドライバーに優しいマシンを作ることを目指します!」(矢部さん)。
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⇒ | 静岡理工科大学「SIST Formula Project」 |
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