トヨタ自動車は、全長3m以下というボディサイズで、大人3人、子供1人が乗車可能な新型コンパクトカー「iQ」を発表した。
トヨタ自動車は2008年10月、全長3m以下というボディサイズで、大人3人、子供1人が乗車可能な新型コンパクトカー「iQ」を発表した(写真1)。価格は140万円からで、月間販売目標台数は2500台。2009年からは、欧州市場でも販売する計画である。
iQのサイズは、全長2985mm×全幅1680mm×全高1500mm。トヨタの主力コンパクトカー「ヴィッツ」と比べて全幅、全高はほぼ変わらないものの、全長を3950mmから大幅に短縮した。小型化を図る一方で、大人3人、子供1人、計4人の乗車が可能な車室空間を持たせるために、パワートレイン、シャーシ、ボディなどの各要素部品で、再設計や新開発を行っている。オーバーハング(車軸からボディ端までの距離)を短くするため、通常はエンジン後方に組み付けるディファレンシャルギヤを前方に設置し、バンパー前端からアクセルペダルまでの距離を従来比で120mm短縮することに成功。従来よりも上方に配置できるセンターテイクオフタイプのステアリングギヤボックスや、ラジエータファンやエアクリーナケースの一体化などで、狭くなるエンジンルームにも部品配置ができるようにした。車体後方側では、通常後部座席の下に配置していた燃料タンクを薄型化し、フロア下に配置することで全長の短縮に貢献している。
車室空間を最大化するため、小型化した部品を多数採用した。前部座席の背中を支える部分をマットからワイヤー構造に変更して薄型化した。また、通常助手席側に配置するエアコンの冷熱ユニットを容積を20%削減することで、インパネ中央部に配置した。これにより、助手席の足元スペースが拡大して、助手席のスライド量は運転席より50mm長い290mmとなり、後部乗員の居住性を向上できた。
ボディ系の電装部品も、車室空間を広く取るために多くの工夫を凝らした。標準装備のカーオーディオは、操作/表示パネルを持たないスロットインタイプのCDプレーヤーだけの新システムを開発した。操作はステアリングの左側に設置したスイッチで、表示はメーター左側にあるマルチインフォメーションディスプレイで行う(写真2)。エアコンの操作は、温度、モード、風量で3分割してある円形スイッチと回転トグルを一体化したインターフェースで行う(写真3)。
一般的に自動車を小型化/軽量化すると衝突耐性などが低下するが、同排気量で世界トップレベルの安全性能を持つ衝突安全ボディをベースに、世界初となる後部窓カーテンシールドをはじめ、運転席と助手席の正面とひざ部、両側面にサイドとカーテンシールドなど総計9個のエアバッグを標準装備することで安全性能を確保した。
開発責任者で第2乗用車センターのチーフエンジニアを務める中嶋裕樹氏は「新たな価値提案につながる新規プラットフォームとして、要素部品に2年、全体に3年、合計5年をかけて開発した。全長3m以下という条件をクリアするため、新たな発想と高い技術力をつぎ込んだ。シリーズ展開の予定はまだないが、iQはさまざまな発展性を持たせられるようにFF車を前提に開発したので、今後の需要によっては可能性は広がるだろう。あと、iPodのように、iQオーナーが自分自身でカスタマイズできるようなアクセサリ展開で『マイQ』が作れるような展開も検討している」と語る。
また、カーエレクトロニクス関連の技術については「高級車のレクサスなどと違って、高度な機能を多数搭載していないので、搭載ECUは10個以下にとどまる。しかし、カーエレクトロニクスの効率化を、機能を分散するか集中するかという方向性で考えれば、iQのカーオーディオは“分散”の、エアコンの操作系は“集中”の代表例と言えるだろう」(中嶋氏)とコメントした。
(朴 尚洙)
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