なかなか始まらない、今回の特訓
ICレコーダー!? ちょ、ちょいと待っちくれ! オメェ、いつもそうだったっけか?
ん? そうですが? 甚さんの声をいつもICレコーダーで取らせてもらっていました。
いや、メモは取らねえのかって。
ですから、ICレコーダーでメモを……。
良君は……地雷を踏んだようです。甚さんの顔が、みるみるうちに赤くなってきました。
そうじゃねぇよ! いつもなーんか変だとは思っていたんだ。こんの、お調子モンめっ! カエレッ! エリカちゃんと交代だ! いますぐぅっ! いますぐにーっ! ンガーッ!
ヒィィ! 何でっ!?
そして、今回もまた(名物の)甚さんの鉄拳制裁が下りました。また良君は甚さんを怒らせてしまったようです。ICレコーダーが気に入らないようですが。
べらんめぇ。ICレコーダーなんかで取ったら、まーた同じ時間食っちまうだけだろが。そんなんだから、大学に6年間も行くことになっちまったんだろう。だいたい、オメェは後からもう一度、その録音を聞くのかい、あん?
うっ、そこ聞かれると痛いよ。そういえばこの前の分も、操作ミスで全消去しちゃったし。ちなみに、僕の職場でもICレコーダーで会議とか打ち合わせとかの声を取るのが普通でして。
普通!? しかしな、録音した安心感で、その場でシッカと話を聞かなくなっちまうものなのだ。ノートにメモを書けよ。オメェみてぇなやつには『豆腐の角に頭をぶつけて死んじめぇ』っていうんだよ。こんなところから教えなければいけないのかい。
甚さんのいうことはもっともだと観念した良君はICレコーダーを引っ込め、その代わり、ノートとペンをかばんから取り出しました。
今回は、世代を超えて根強い人気のプラレール電車(図1)で、「設計思想とその優先順位」とは何なのか、もう一度、考えてみましょう。
今回はオレが設計分析をやってみせてやらぁ。世間じゃ『2007年問題』とか『技術の伝承』とかいっていやがるが、その前にテメェで範を示せ! ってぇもんよ! オメェとこの課長にいってやれ! 『範を示せ!』と……・
甚さん、頼もしい! まあ、うちの会社では技術伝承の“ぎ”の字すら出てきませんが……。
企画書の重要性は理解できても、企業によっては、企画者がいないことや工数を捻出できないことで、どうしても企画書を作成できない場合があるかと思います。このようなときは、6W2Hをそのまま企画書として代用します。表1は筆者の観点から作成した「プラレール電車の6W2H」です。
おもちゃの設計は大変難しいものです。幼児が使うのは当たり前で、そこに兄弟、両親、祖父母までが加わります。安全であることは当たり前なのですが、設計者はどうも、大人の視点や技術屋の視点でものを考えてしまいがちです。
そうすると平気でボタン電池やスライド方式のカバーを採用してしまいます。しっかりとした「使用目的の明確化」の設定を個人の設計と全員の設計(チームデザイン)とで確定することが重要です。
ここまで、どうだ? 復習できたかってんだ。オイ、返事しろ! 技術者の基本はあいさつと返事だぞ。
オイーッス!
次に、再び「プラレール電車の6W2H」を基に、「設計思想とその優先順位」を作成します(表3)。
通常の商品で「安全」の優先順位が第1位になることはありません。暗黙知として優先になっているからです。しかし、子供が使うおもちゃや、文具、食器などの商品は別格で、優先順位の第1位に「安全」が設定されます。……これが設計という職業です。
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