今回の良君は、中だるみもモードか!? プラレール電車で、「設計思想とその優先順位」とは何なのか、それをもう一度考えてみよう。
根川 甚八(ねがわ じんぱち)
根川製作所 代表取締役社長。団塊世代の大田区系オヤジ技術屋。通称、甚さん
国木田良太(くにきだ りょうた)
ADO製作所 PC事業部 設計2課 勤務。80年代生まれのイマドキな若者。機構設計者。通称、良君
*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。
第4回の「加圧式ボールペンを設計分析しようじゃねぇかい!」は、いかがでしたか? “3000hPaの加圧”“指紋の形状を考慮した滑り止め溝”、この2つのテクニカルキーワードが200円のボールペンに仕込まれていることに感激してくれたでしょうか。
それでは恒例の「理解度チェック」です。3項目以上理解していた方は先へ進みましょう。そうでない方は、第4回を読み直してみてください。
理解度チェック
- 技術で差別化するという意味が分かった
- 差別化は、「設計思想とその優先順位」で決まることを理解した
- 「何でもあり!」な商品では差別化はできない
- 設計者の成果物の1つに特許出願がある
- 加圧式ボールペンの書き味を即、味わってみた
ところが、このチェックリストの4番目の項目に関して、良君は異議があるようです。
一生懸命働いているのに、給料をもらう資格がないだなんて
甚さん! 先日、ある人から『特許を出さないのは設計者じゃない、お前は給料をもらう資格がない』といわれました。随分ヒドイと思いません? 僕なりに一生懸命働いているのに!
そいつの気持ちはよく分かるぞ。オメェ、自分で図面を描かねぇし、そのうえ特許も出願したことがないだろう? そいつも『特許出さずは設計者にあらず』(第4回 3ページ目、後半参照)といいたかったんだろう。
以前話した僕の上司“出世逃げ課長”なら、『特許を出す時間があるなら、英語の勉強しろ』とかいうでしょうけど、それ以前に、日ごろの業務が忙し過ぎて、そんなことまで気が回りますか! それでも、僕は給料をもらえないってわけ?
“出世逃げ課長”のいうことなんて忘れちまえよ。オメェみたいなやつにはな、少なくともオレんちの会社じゃ『設計料』としては支払いをしねぇな。でも、生活があるだろうから『労力料』としての給与は支払っているのさ。その代わり金額は『設計料』に比べれば低くなるが。
そんなの、経営者のエゴじゃないですか! とにかく、働くだけ働かせ、何かと理由を付けては給料を出さないという……まるでうちの会社と同じだ!
いんや、オレんちは違う。きちんと正当に給料を決めているぞ。設計書や図面で審査を行っているし、特許出願件数が多いやつもきちんと出世させているしな。
僕の会社はね、甚さんの製作所と違うんです。組織が複雑なんです。同じことができるわけないでしょう!
べらんめぇ! オレんちをコケにしやがったな!
前回も説明したように、設計者の3大成果物は「設計書」「図面」「特許」です。また成果物とは、審査されるものです。甚さんの会社でもそれに従っているわけです。
商品開発に関して、QCDを決める重要な役目を持っているのは、開発、設計、製造、調達、営業など全部門です。特に、開発初期のQCDに関する設計者の役割は大きいといいます。開発後半では製造部門が、量産中では営業部門が主役です。そして、開発初期から後半まで一貫し、設計者が責任を持って取り組むべきなのは、特許出願です。それだけは、他部門にできないことだからです(製造特許を除きます)。
そんじゃあよ、世の中の職業で、審査なしで報酬がもらえる職業をいってみやがれ。
えっと、タクシーの運転手でしょ、ラーメン屋でしょ、寿司屋、床屋、美容院、警察官、学校の先生……。
べらんめぇ! 全員が資格(免許)保有者じゃねぇかい。 オメェがいった職業の場合は、業務の都度で審査ができねぇから資格という制度があるんだ。
んー……分かりましたよ、甚さん。審査してもらえる成果物を出せるように、僕も何とか努力してみますよ。本物のプロフェショナル目指して、今回も頑張りますか!
良君もどうにかイライラを静め、ようやく今回の設計分析大特訓が始まるようです。今回も張り切ってそれに臨もうとする良君でした……が、彼の様子を見ていた甚さんの表情が曇ってきました。さて、どうしたのでしょう?
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