「STL(Stereo Lithography)」とは、三角形の小さなサーフェスを張り合わせて形成される3次元モデルデータのことで、3次元プリンタや光造形機などのラピッドプロトタイピング装置へ入力するために使用される。最近は、多くの3次元CADがSTL変換に対応している。これらをうまく連携して検討時間や開発コストの大幅削減を図りたい。
Zコーポレーション ジャパンは、3次元プリンタ「ZPrinter 450」を展示し、デモンストレーションを行った。*同社製品の代理店DICOのブース内で出展
また同社は2008年6月25日に、上記のZPrinter 450と「ZPrinter 310 Plus」「Spectrum Z510」の3機の値下げを発表した。ZPrinter 310 Plusが300万円弱と、ミッドレンジCADの価格程度にまで値を落とした(下記参照)。
製品名 | 新価格 | 旧価格 |
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ZPrinter 310 Plus | 298万円 | 580万円 |
Spectrum Z510 | 798万円 | 1180万円 |
全導入台数に対し約9割は設計業務が行われる事務所内であり、残り約1割の導入先は試作・加工業者などだという。また同社の3次元プリンタは、われわれが日常でよく使うドキュメントを印刷するプリンタ感覚で、パソコンに直に繋いで使用することができる。ファイル形式は、STL、VRML、PLY、3DSの4つだ。
またフルカラーによる造型が可能なのは全世界でも同社製(「ZPrinter 450」「Spectrum Z510」)のみであり、その技術の特許を持つ。プリンタ内部には市販されているカートリッジが使えるインクジェット機構が組み込まれている。
造形時間は化粧品ボトルで約2時間、スポーク付きのタイヤ形状が約1.5時間、住宅模型で約8時間だという。また造形費用は他社の3次元プリンタの5分の1程度をうたっていて、携帯電話のカバーであれば1つ400円程度とのことだ。
造形材料やインクは簡単に取り替えられるカートリッジ式になっている。作業現場が薬品や油まみれになるわけでもなく、大掛かりな掃除をしょっちゅうする必要もない。加工現場でなくとも事務所で使えるメンテナンス性が考慮されている。
造形材料は、石膏(せっこう)、エラストマの混合素材、セラミック(「ZCast」)などがある。コーティング材(含浸材)を使うことで、硬度などの物性をコントロールすることが可能だ。あらかじめ用意されているコーティング材だけではなく、水もコーティング材となる。「zp140」は、水と材料とが化学反応することで硬化するという特殊な性質を持たせた複合素材である。
「当社の3次元プリンタはフィギュアや住宅模型の製作にも使えますし、実際、模型製作関連の企業からの受注もあります。いままでは設計・製造業を主な顧客ターゲットにしてきましたが、これからはほかの産業分野にもどんどん広めていきたいですね」とZコーポレーション ジャパン 代表取締役 宇野博氏は今後の意気込みを語った。
同社製プリンタはフルカラーの造形なので、例えばフィギュアの場合も、髪や肌、服などそれぞれの着色も造形と一緒に行ってしまえる。
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⇒ | Zコーポレーション(日本語) |
ファソテックはインクジェット式3次元プリンタ「Connex500」を展示した。対応ファイル形式は、STL、ODF 、SLC。硬性樹脂と柔軟性樹脂など、違う複数の樹脂材料を組み合わせての造形を行えることが同社製3次元プリンタの強みである。積層厚は16μmだ。
例えば右の写真(複数のギアが組み合わさった形状)のようなものが造形可能だ。このように、組み合わさった状態でそのまま造形してしまう。くれぐれも個々に造形して組み込んだものではない。また1つ1つのギアはスムーズに回転する。部品それぞれのすき間にはゲル状のサポート剤を入れ、造形していく。最後にサポート剤を洗い流して完成だ。またそれぞれのギア状の部品は、色や材質が異なっている。10μm単位の精度が出せなければ、このようなギアがかみ合う状態での造形は難しい。
光造型システムを製造するシーメットは同社の光造型機 RM6000IIと造形サンプルを展示した。「一昔前の考え方だと、光造形は短納期だけれど、精度が良くないし、脆(もろ)いというイメージがありました。しかし、いまはだいぶ進歩しました」と同社説明員はいう。
かつての光造形は積層方向の精度が懸念されたが、同社の造型機による積層方向の精度は±0.05mmだという。また、弾性があり割れづらく、スナップフィットの評価にも使える光硬化樹脂「TSR831」もある。こちらにはタップピングや切削加工も可能だ。
また光造型用の光硬化樹脂は透過しているものの、くすんでいる(透過率が低い)のが一昔前は通常だった。しかし90パーセント以上の透過率である光硬化樹脂「TSR829」などが近年で登場している。同社のユーザーの間では、よく自動車エンジンやエアコンなど、流体が絡む試作評価に使われるという。筺体や中身の機構をTSR829で製作し、評価対象の液体や空気に着色する手段が取られる。
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⇒ | シーメット |
⇒ | 出展報告 |
⇒ | シーメット 萩原恒夫氏による光造形の解説 |
クリアフォームはCAD/CAM&PLM/PDM ゾーンにて、3次元スキャナ「Handyscan 3D」を展示した。
同社の代理店となっているトヨタケーラムやファソテックのブースにおいてもHandyscan 3Dのデモが行われたが、もちろんその本家本元であるクリアフォームのブースでもデモを行った。
「レーザーで読み込んだ(複数の丸型シールが基準となる)形状のとおりにサーフェスポリゴンを作ります。そのデータでSTLファイルを生成し、CADで読み込むこともできます」(クリアフォーム 日本担当 取締役 遠藤道義氏)。先述のように、そのモデルデータはサーフェスなので、CADで読み込むと中空状態である(ソリッドでない)。ソリッド化するにはCAD側で処理する必要がある。
またセルフポジショニングの機能があるので、通常の寸法測定器のようにCMMや測定アームは必要がなく、セットアップに手間が掛からないことも利点だという。
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⇒ | クリアフォーム(日本語) |
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ITの技術革新は非常に早い。自分が最新だと思っていた技術は、多忙にかまけて月日が流れるうちに、はっと気が付けば二世代ぐらい前の話になっているものだ。そして、いま自分が何カ月も手こずっているその設計開発も、とある職場ではひょっとして数日で終わっているのかもしれない。本レポートで取り上げたような最新のITソリューション動向に対し、日ごろからアンテナを高くしてチェックしたい。
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