そんな日程じゃ無理! といえない生産管理者誰も知らない生産管理の苦悩を徹底討論(1)(2/3 ページ)

» 2008年06月09日 00時00分 公開
[上島康夫@IT MONOist]

C氏 私は7年前に、ネットビジネス業界からいまの会社に転職し生産管理を担当するようになりました。私の仕事は生産管理システムの開発が主で、注文にどうやって対応するのかといった実務は、同じ部内の別の人間が処理しています。
 工場で造っているのは香辛料で、お客さんごとに求められる入り目(20kgごと、あるいは1kgを10個パックにしたものなど)といいますが、そういう細かい単位での管理がまったくできていなかった。そこで経営者が工場にITシステムを導入して、在庫の可視化と労務コスト削減を目指したのです。それぞれの工程ごとの在庫も見たいという要件も満たすように作りました。
 この手のソフトウェアはパッケージで販売されているものもいろいろありますが、かなりカスタマイズが必要だったので、開発ベンダさんに一から手組みで開発してもらいました。当初はパッケージ製品にはとても手が出ないということで手組みの開発を選んだのですが、追加修正が重なり、結局はパッケージ製品と同じくらいの出費になってしまいました。毎年経営者から厳しいお言葉をちょうだいしております(笑)。

村上 どのような生産形態ですか?

C氏 大体通年で同じくらいの注文がある、ほとんど需要変動のない商品ですから、そのデータに基づいた見込み生産、在庫型販売が主体です。しかし問題は注文のおよそ8割は出荷日前3日間に集中してしまうことです。1〜2週間前から発注してくれるお客さんはほとんどいません。「すぐに持ってこい」という注文形態が7〜8割を占めますので、いくら在庫を持っていても対応しきれないものがどうしてもある。

村上 その食品は日持ちしないものなんですか?

C氏 いえ、賞味期限は大体1〜2年くらいです。ただ、大手の食品メーカーさんによっては、当社が「6カ月間は持ちますよと」いってもダメなんですよね。例えば「製造から2カ月以内のものを持ってこい」といわれてしまう。大手のお客さま相手に、そこを何とか……とはいえない立場なんで、いわれるがままに造っているというのが実態です。
 大手食品メーカーと長い取引の歴史があるので、お客さまの特定商品に合わせた製品を出荷しています。が、やっかいなのは年間通しての出荷量は大体一定なのに、単月では決まった数量を発注していただけるわけではないんですよね。「あれ、今月は来ないなぁ」と思っていると、翌月に2倍の量を発注される。そうなるとこっちは大慌てで、残業残業でなんとかしのぐしかありません。
 基本的に在庫計画も立てるんですが、お得意さまの特別な商品で無理な注文が入ると、計画のすべてを差し置いて対応に追われ、一区切りつくと通常の在庫計画に沿った製造に戻るという繰り返しです。これをやっているとだんだん通常製品の在庫が足りなくなって、欠品につながってしまいます。

生産計画なんて“絵に描いたもち”

村上 生産管理部門は、営業の受注状況、お客さまの動向に大きく影響を受けますよね。特に見込み生産では、見込みが外れると大変になる。その当たり外れについてはどう対応していますか。

A氏 欠品と過剰在庫については、いろいろあるんですが、当社の受注先には公共事業も含まれているので、下期に受注が増える傾向があるんですね。お役所の予算消化ってヤツです。われわれ工場もそれを見越して、夏場に冬眠前の熊のようにある程度造りだめしておいたりしますが、なかなかうまく上期と下期でバランスが取れないですね。追い打ちを掛けるように公共事業費が削減されると、受注が一気に減ってしまい、在庫が積み上がったままで、あるときふっと造るものがなくなってしまう。

村上 それは営業の見込みが強気過ぎた?

A氏 営業の見込み……というか、予算ですね。それと工場側のサバ読みも若干入っています。工場のサバは増やす方も減らす方もあります。うちの営業がこんなに注文を取れるわけないじゃないかと思えば、生産は減らしておきますし、その逆もあります。サバを読むときには、1つは予算を逃げ道にして、「だって予算がこれだけなんだから、そこまで造っておいても問題ないはずでしょ」みたいにね。上期、下期の予算が決まって、それをうまく通年に分散させて生産していたら、見込みが大きく外れて目も当てられない状況になり、その火消しに半年追われたりとか。

村上 その火消しってどんなことをするのですか?

A氏 生産現場の人たちを食べさせていくというか、釜の火を消さないようにするというか、生産のシフトを減らしてみたり、在庫の予算を反古(ほご)にして在庫が増えたまま突っ走るとか(笑)。

村上 お客さまのサバというよりは、予算のサバの方が大きいみたいですね。

A氏:そのとおりです。3つのサバのうち、営業と工場のサバが、お客さんのサバよりはるかに大きいです。マッチポンプですね、まるで。自分で仕掛けて、自分で大やけどをしている。
 それから、リベートも問題です。一定期間の取引量をお客さんと約束して、例えば3カ月で100万円発注してもらうという約束を先々に対してするわけです。そのとおり発注してもらえると2%リベートを支払うとか。ところが約束した量までいかないこともある。問屋さんや流通さんなどは、自分で消費するわけじゃないので、売り先が要らないといえば発注する必要はなくなる。それでどうするかというと、お客さんは要らないといっているのに、無理やり注文をくれといって需要のないところに押し込む。だから3カ月ごとに月末の受注が急に増える。

村上 当然、その後は受注ががくんと落ちる。こういうのを「実需」じゃなくて「仮需」と呼ぶんですね。仮需はいったんお客さんの倉庫に製品が入り、倉庫が在庫でいっぱいになり、そのお客さんは当分発注を手控える。

A氏 普通に考えれば、当社のエンドユーザーさんは建築をされている方たちですから、3カ月ごとの月末にたくさん働くなんてことはあり得ないんですよね。1月に10日働き、2月に20日働き、3月は28日働くなんて働き方をするわけがない。つまり最終の需要というのはほぼ毎月安定しているはずなのです。

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