要求仕様に見合った加工手段を見極めることはコストダウン競走に勝つための重要な鍵だ。 その研削加工、本当に必要?
前回に引き続き、産業機械をコストダウンする手法の1つであるVA(価値分析)およびVE(価値工学)を仮想ユニットの設計事例を通して紹介します。
今回は、要求仕様に基づいて適切な切削加工を見極めつつ、1つの部品を複数に分割するか、もしくは複数の部品を一体化するかを検討していきます。
図1-1・2は、マグネットチャックにセットする治具プレートです。最大限の軽量化を図るためにT字溝を構築しました。「ベースの重量を軽くする」という目的において、理想的な形状にできたのはいいけれど、加工工数が大幅に増えてしまいました。
T字溝を加工するにはT字スロッターカッターでの加工が必須となり、加工工数削減に有効な重切削によるラフ加工が不可能となります。だから軽量化はできても、加工工数が増えてしまうことになるのです。
以下では、重量を軽減しつつも加工工数を削減し、コストダウンを図る方法がないか検討します。
上記問題の解決策として、まず図2-1のような形状の溝に変更しました。軽量化に関しては要求仕様通りとなり、かつ重切削も可能な形状(図2-2)となりました。これは、まずまずの結果でしょう。
しかし、これではマグネットチャックへの設地面積が減り、磁力が弱ってしまいます。すなわち「マグネットチャックにセットする治具」としての要求性能を満たしてないということになります。これでは合格点とはいえません。
そこで、マグネットの接地面積を増やしながらも軽量化をさらに行い、かつ加工工数も削減できる手段を検討しました。
です
一体構造だと要求仕様を満たすのは、どうやら難しそうです。分割してネジ止めによるユニット構造にします(図3-1・2)。
これで、軽量化と加工工数削減、両方の要求を満たしました。強度面の問題が懸念されますが、一般的にこのような部品では、優れた強度を要求されるということはないでしょう。それゆえのVAと解釈してください。
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