組み込み向けWindows XPとは? PC向けとは何が違うのか? OSの概要、専用開発ツール、OSの構築方法を簡単に解説する
現在、マイクロソフトは組み込みデバイス市場に向けて大きく分けて2種類のOSを提供している。
1つは、「Microsoft Windows XP Embedded」(以下XP Embedded)である。XP Embeddedは、Windows XP Professional(以下XP Professional)のすべての機能を1万個以上のコンポーネントに分割したOSである。必要なコンポーネントを組み合わせて、独自仕様のWindows XPデバイスを作成できる。
XP Embeddedの一種として、「Windows Embedded for Point of Service」(以下WEPOS)というOSも提供されている。WEPOSはPOS/KIOSK端末で利用するコンポーネントのみが実装されており、XP Embeddedよりもフットプリントが小さく、より組み込み市場に特化している。そしてXP Embeddedよりも容易に利用できる。ただし、XP Professionalよりも機能は限定されている。
XP Embeddedと並ぶもう1つのOSが「Windows CE 5.0」(注)である。Windows CEはWindows XPベースではなく、機能がすべてコンポーネントで構成されている。高度なネットワーク環境、多彩なマルチメディア機能などのコンポーネントを必要に応じて組み合わせることにより、XP Embeddedよりもさらにフットプリントの小さなOSを作成できる。また、Windows CEはプロセスによるメモリ保護機能やマイクロ秒レベルでの応答性能などを追求したリアルタイムOSである。現在注目されているW-ZERO3やhTc Zなどの携帯電話に採用されたWindows Mobileや、車載端末向けのWindows Automotiveは、このWindows CEがベースになっている。
XP Embeddedは、さまざまな場所で見ることができる。例えばキャッシュレジスタや券売機、ATMなど、Windowsの画面と分かるデバイスが増えている。豊富な機能とデバイス開発が容易な点が、XP Embeddedを採用するメリットである。
XP EmbeddedはXP Professionalのすべての機能を備えているほか、組み込み特有のニーズに合わせて以下の機能が追加されている。
なお、XP EmbeddedはMUI(Multi User Interface)がベースになっている。つまり、通常の日本語版XP Professionalではなく、英語版のXP Professionalに日本語MUIリソースを追加した環境と類似している。
「Enhanced Write Filter」(EWF)は、XP Embedded特有の機能である。XP Embeddedは、ハードディスク以外のフラッシュ媒体(CF)などに格納することが多い。そのディスクの保護を目的とした機能である。
EWFは、書き込みの処理を「EWFボリューム」と呼ばれる領域にリダイレクトすることでオリジナルデータの変更を抑止するとともに、書き込み回数に制限があるストレージの寿命を延ばすのにも役立つ。
EWFには、EWFボリュームをディスク上に置く「Disk Overlay mode」と、RAMに置く「RAM Overlay mode」の2つのオーバーレイタイプがある。
XP Embeddedの開発を行ううえで、このEWFの設計は非常に重要な部分である。そして、デバイスの安全性や寿命に大きく影響する。EWF機能については、場を改めて詳細に解説する予定である。
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