遊び心消え、ビジネス色強まったマイクロマシン展。「夢とロマン」に溢れた展示はないものかと探し回ったら“ロボットの筋肉”を目指す新世代アクチュエータや人工筋肉、鮫肌を表現できる技術などに出会った。
3年ぶりに「マイクロマシン展」に行ってきた。場所は例年どおり“科学大好きっ子”の聖地「科学技術館」(東京・北の丸公園)だ。
超精密・微細加工の技術が一堂に集うこの展示会には、数年前まではコインの上を走るマッチ棒の先ほどの超極小マイクロカーや、大きさが10ミリほどの4足歩行する犬型ロボット、1ミリ四方の金塊に削られた能面など、遊び心あふれる展示が見られた。
だが、最近は微細技術も“マイクロ”から“ナノ”の世界に突入しており、来場者が“肉眼で見える”ような展示では最先端技術をアピールできなくなってしまった。人の顔やトイレ(?意味不明)をナノレベルで切削した様子をプローブ顕微鏡写真のパネルで紹介するブースもいくつかあったが、ほとんどのブースではマイクロマシン技術が今のビジネスでどのように生かされるかといった現実的な展示が目立つ。
……まずい。記事ネタにならない。
ええい、ないものはしかたない。童心にかえって科学技術館の常設展示でも見て帰るか。
出展者が大幅増となった今年のマイクロマシン展は2階フロアまで使用することになり、その結果(チェックが面倒なためか)5階までの科学技術館常設展示の見学が無料(通常時大人600円)になっているのだ。なんでも、1階は企業、2階は大学や国公立研究所が中心となるアカデミックパビリオンと色分けしているらしい。
ん?アカデミックパビリオンか! ここなら、企業が忘れてしまった“夢とロマン”が見つかるかも……。
というわけで長い前フリを終了して、アカデミックパビリオンで目にとまった展示をいくつか紹介しよう。
今、ロボットの世界では、より小型軽量でパワフルなアクチュエータ(作動装置)の開発が望まれている。数あるアクチュエータの中でも、構造が単純で小型化するほど重量あたり出力で有利なのが静電アクチュエータ。だが駆動に高電圧が必要な点や単体での出力が弱いことから「静電気力は弱い」というイメージはいまだ払拭されず、ロボットの“力こぶ”として活躍するまでには至っていない。
東京工業大学バイオ研究基盤支援総合センター実吉研究室が出展していたのは、こうした静電タイプのイメージを覆す「積層型静電アクチュエータ」。電極間を数十マイクロメートルレベルに極狭化して電磁アクチュエータ並みの出力を引き出した静電アクチュエータを、さらに幾重にも折り重ねて積層化することでロボットの動力源になるぐらいの高出力を発生させることができるという。
「プラスチックリボンを折り重ねているため非常に軽量なのが特徴。また一回電圧をかけると状態を保持するので消費電力面で有利。最終的にはロボットの筋肉を目指す」(担当者)
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