型式不正も、全固体電池の盛り上がりも、2024年の出来事です:モビリティ 年間ランキング2024(2/2 ページ)
年末ですね。1年間お疲れさまでした。年末恒例のランキングですが、2023年末に作ってからあっという間に2024年の分を書く時期になったような気がします。
いまさら聞けないクルマの仕組み
連載「いまさら聞けないクルマの仕組み」からは、7位と9位に2本の記事がランクインしました。この連載がスタートしたのは、「自動車についてたくさんの人が話題にするのは良いことだけど、なんだかいろいろ端折って話す人が多いんじゃないかな?」と私が思ったことがきっかけでした。その端折られた部分を1つ1つ分解して解説してもらった連載です。
個人的いちおし、「車電分離」「ソフト人材の評価制度」
ここからは11〜20位の中で個人的に推薦したい記事を紹介します。まずは、12位にランクインした「ホンダN-VAN e:は補助金で200万円以下、車電分離で低価格なリースも」です。
車電分離というのは、EV(電気自動車)のコストの大部分を占めるバッテリーと、車両本体を分けて販売するコンセプトです。車両を保有するのはユーザーですが、バッテリーは自動車メーカー側が所有します。所有を分離してEVをより手ごろな価格で提供することが狙いです。そのコンセプトが、業務用や商用の車両からスタートする気配を感じたのがホンダの軽EV「N-VAN e:」でした。
車電分離で自動車メーカー側がバッテリーの所有権を持つのは、バッテリーのリユースやリサイクルを確実に進めるという狙いもあります。これまでは電動車が中古車として外国に輸出されてしまうとバッテリーもそのまま流出していました。リース販売が多い業務用や商用の車両であれば、バッテリーを確実に回収するための車電分離も導入しやすいといえます。車電分離に言及した記事は他にもありますので、ぜひ併せてご覧ください。
もう1つの個人的推薦記事は14位の「ソフト人材をどう育て評価するか、デンソーが10年かけて作った制度」です。ソフトウェア人材を増やすのは自動車業界共通の課題ですが、それに向けてデンソーは人事評価制度も整備しました。
デンソーの人事制度は管理職を目指す前提で業務内容を評価する側面が強く、ソフトウェア開発者としての成長やスキルアップ、技術的な成熟度を考慮した評価基準が定められていませんでした。また、管理職にならないながらも、技術者として能力のある人材を評価する制度も十分ではなかったとしています。
ソフトウェア開発を外注するだけでなく自社でも人材育成が必要だと考えられている中、管理職としてステップアップするより技術者としての道を極めるぞ、という方々が評価されると、企業の強みがより磨かれて良いですよね。技術者向けの評価制度が整い、昇給にも反映されるようになれば、その環境自体が採用で技術者を集める武器にもなります。デンソーのこの取り組みの今後の進展が楽しみです。
日産自動車とホンダの経営統合検討に関するニュースなど、年末も自動車業界はあわただしいですね。事前の報道で話題になっていた鴻海精密工業(ホンハイ)に関連して、ホンハイのEV事業の最高戦略責任者(CSO)である関潤氏がEV戦略を語った記事もじわじわ読まれています(関連記事:元日産の関氏が鴻海で考える、EVの苦境の乗り越え方)。
最後に、過去の年末ランキングの一覧も載せておきます。自動車業界は“100年に一度の大変革”で動きが早いといわれている一方で、数年単位で動く物事もまだまだ多いです。これまでの年末ランキングには、完全に過去のことになっていないキーワードが潜んでいるように思います。気になった年のランキングもぜひ目を通してみてください。
インフルエンザなど感染症が流行しています。のんびり楽しく年末年始を過ごすためにも、どうぞご自愛くださいね。少し早いですがよいお年をお迎えください。
2016〜2023年のモビリティフォーラムの年間ランキング
- 2023年
- 2022年
- 2021年
- 2020年
- 2019年
- 2018年
- 2017年
- 2016年
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- メーカー5社が型式申請の不正行為を報告、認識不足が背景に
国土交通省は複数の自動車メーカーから型式指定申請における不正行為の報告があったと発表した。不正行為があったのは、マツダ、ヤマハ発動機、ホンダ、スズキ、トヨタ自動車の5社だ。 - トヨタで新たに7車種の不正が発覚、国交省が是正命令
国土交通省は型式指定申請で不正行為を行っていたトヨタ自動車に対する立ち入り検査の結果、新たに7車種の不正を認定するとともに、是正命令を発出した。 - 「ラボなら良品率100%」、全固体電池の量産へ着実に進む日産
日産自動車は横浜工場に建設中の全固体電池のパイロット生産ラインを公開した。2024年度中の稼働を目指す。 - EVシフトの伸び悩み期間「プラトー現象」を乗り越えるには
2024年に入り、EVシフトに関して、ネガティブなニュースも数多く見られるようになってきた。ニュースに一喜一憂する訳ではないが、これまで急激なEVシフトに対して、やや揺り戻しが起きているのではと感じる。 - 注目集まるリン酸鉄リチウム、メリットとデメリットを整理しよう
中国系企業を筆頭にLFP系材料であるリン酸鉄リチウムの採用事例が目立つようになってきています。リン酸鉄リチウムの採用については、高い安全性や低コストといったメリットが挙げられる一方、エネルギー密度の低さやリサイクル時の収益性に対する懸念などデメリットに関する面の話題を耳にすることもあるかもしれません。 - SUBARUは次世代EyeSightで死亡事故ゼロ実現へ、ステレオカメラ×AIは相性抜群
SUBARUは、2020年12月に東京の渋谷に開設したAI開発拠点「SUBARU Lab」におけるADAS「EyeSight(アイサイト)」の進化に向けた取り組みとAMDとの協業について説明した。