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「ラボなら良品率100%」、全固体電池の量産へ着実に進む日産電動化(1/4 ページ)

日産自動車は横浜工場に建設中の全固体電池のパイロット生産ラインを公開した。2024年度中の稼働を目指す。

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 日産自動車は2024年4月16日、横浜工場(横浜市神奈川区)に建設中の全固体電池のパイロット生産ラインを公開した。2024年度中の稼働を目指す。2028年度に全固体電池を市場投入する際と同じ生産設備や製造方法を導入するため、全固体電池の量産開始後もパイロット生産ラインからは年産100MWh弱と少量ではあるが供給できるという(量産では小規模でも3〜5GWhの生産能力が必要になる)。

 日産自動車では2018年から全固体電池の材料研究を開始。2021年に発表した長期ビジョン「Ambition 2030」の中で自社開発による全固体電池の製品化に取り組むことを明言し、2028年度に全固体電池を搭載したEV(電気自動車)を市場投入することや、コスト低減の目標などを示した。2022年には総合研究所(神奈川県横須賀市)に全固体電池のセルを試作生産する設備を設置するとともに、生産プロセスの開発やセル/パックの構造設計などの進捗状況も発表した。

 パイロット生産ラインを2024年度中に設置するのは当初の計画通り。総合研究所での技術開発の進捗を受けて、パイロット生産ラインの準備も順調に進んでいるという。今後は2026年度に全固体電池を搭載した試作車で公道走行を実施し、2028年度に市場投入する。2024〜2025年度は品質を検証するフェーズで、2026〜2027年度は生産能力や生産性の向上に注力する。


建設中の全固体電池生産のパイロットライン[クリックで拡大] 出所:日産自動車

なぜ全固体電池が必要か

 全固体電池は、長期ビジョンや中期経営計画の中で掲げる電動車の販売拡大に向けた取り組みの1つ。全固体電池のメリットは、重量エネルギー密度を向上できる点だ。車両サイズが大きく大容量のバッテリーが求められるEVでバッテリーの重量による走行距離低下を抑制する他、搭載できるバッテリーに限りがある小型車のEV化にも貢献する。電解質が液体ではなくなることで運転温度限界が引き上げられ、充電時間の短縮も図れる。材料の調達リスクやコスト、安全面なども、電解液を使うリチウムイオン電池より優れるとしている。

 日産自動車が全固体電池の開発目標に掲げるのは、体積エネルギー密度1000Wh/l(リットル)だ。硫化物固体電解質とリチウム金属負極を採用し、性能達成に向けた開発を進めている。正極は三元系を使う予定だが、全固体電池は安定度が高いので、今後より廉価で活性度の高い正極材に変更する可能性もあるとしている。

 日産自動車 常務執行役員 総合研究所 所長の土井三浩氏は「2年前(2022年)に発表した時点でも全固体電池の可能性は分かっていたが、材料の選定など実現する手段が見えていなかった。今は材料についてはほぼ固まった。何を作ればいいかは分かった。これからどう作るかのチャレンジが始まる。量産に向けた取り組みがこれから始まるが、入社して40年で経験がないくらい研究所と生産技術が一体となって進めている」と自信を見せた。

 2022年に全固体電池の開発の進捗を発表した時点では全固体電池の歩留まりに課題があると言及していたが、2023年度にラボレベルでは良品率100%を達成。今後は、量産と同等のパイロット生産ラインで実践的な生産スピードに挑む。

物理的にも化学的にも「均一」さが重要

 全固体電池の製品化に向けて、硫化物系固体電解質とリチウム金属負極の使いこなしが課題となる。

 全固体電池を組み立てた時点ではリチウムイオンは正極内に存在しており、充電に伴い正極から固体電解質を通って負極側に析出する。全てのリチウムイオンが負極側に移動すると充電が完了する。放電では負極にあるリチウムイオンが固体電解質を通って正極側に移動する。リチウム金属負極が固体電解質に接触していないと放電できないため、均一かつ十分な接触面があることが求められる。また、電極の化学的なばらつきや物理的な凹凸があると、界面の剥離や、リチウムのデンドライト(ひげ、突起)の発生による短絡が起きかねない。材料にも生産技術にも均一さが求められる。

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