特集
「ラボなら良品率100%」、全固体電池の量産へ着実に進む日産:電動化(4/4 ページ)
日産自動車は横浜工場に建設中の全固体電池のパイロット生産ラインを公開した。2024年度中の稼働を目指す。
パワー半導体の対策
半導体市場は過去20年間で市場規模が5倍に拡大しているが、コロナ禍での半導体不足のような事態が今後も起こるリスクがある。そこで、コスト低減と半導体の調達リスク軽減を両立するため、廉価版のインバーターを開発する。現在はサプライヤーが専用設計のカスタマイズでパワー半導体を供給しているが、汎用パッケージのディスクリートパワー半導体を使うことで調達しやすくし、コストを1割前後削減する。
専用パッケージよりも端子が大きくなるため、従来のはんだ付けではないレーザー誘導加熱などの新加熱工法を開発する。また、冷却や絶縁、固定などの機能を両立するため、絶縁放熱接着シートを使う。
銅の対策
モーターの巻き線に使用する銅は、2000年ごろから需要が急拡大して価格は5倍に跳ね上がった。今後もさらに価格が高騰する懸念がある。銅の価格はアルミに対して3.3倍となっており、モーターにアルミ平角線を採用することは軽量化だけでなくコスト低減にも直結する。
モーターの巻き線にアルミを使用するため、生産技術や設備をフル活用して平角線ステーターを早期に実現する。柔らかいアルミの曲げ成形や溶接の品質が技術課題となる。ただ、アルミの平角線は従来のモーターと同じ体格で同じ性能を確保することが難しく、アルミ平角線に合わせたモーターの設計も必要だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 日産が新たな中計を発表、2026年度までに新型車30車種
日産自動車は販売台数の増加と収益性の向上に向けた2030年までの中長期的な取り組みをまとめた経営計画「The Arc」を発表した。2026年度までに足元から100万台の販売増と、営業利益率6%以上の達成を目指す。 - 日産は半固体ではなく「全固体」電池、懸念される低寿命をNASAや大学と克服
日産自動車は2022年4月8日、2028年度の実用化を目指す全固体電池の開発状況を発表した。 - 日産は2028年に全固体電池を実用化、EVをエンジン車並みのコストに
日産自動車は2021年11月29日、オンラインで会見を開き、2030年度に向けた長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」を発表した。 - 日産が電動パワートレインのコストを3割削減、電動車の普及計画に弾みつける
日産自動車は2019年比でコストを30%削減する新開発の電動パワートレイン「X-in-1」の試作品を公開した。 - エンジン生産4000万基の日産横浜工場は電動化時代をどう生きるか
日産自動車は横浜工場でのエンジン生産台数が累計4000万基を突破したと発表した。 - 日産の燃料電池が定置用でトライアル開始、使用するバイオ燃料も確保
日産自動車はバイオエタノールから取り出した水素で発電する定置型の燃料電池システムを開発し、栃木工場でトライアル運用を開始した。使用するバイオエタノールは、スタートアップ企業のバイネックスと協業して確保する。