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日産の燃料電池が定置用でトライアル開始、使用するバイオ燃料も確保脱炭素(1/2 ページ)

日産自動車はバイオエタノールから取り出した水素で発電する定置型の燃料電池システムを開発し、栃木工場でトライアル運用を開始した。使用するバイオエタノールは、スタートアップ企業のバイネックスと協業して確保する。

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 日産自動車は2024年3月6日、バイオエタノールから取り出した水素で発電する定置型の燃料電池システムを開発し、栃木工場(栃木県上三川町)でトライアル運用を開始したと発表した。使用するバイオエタノールは、スタートアップ企業のバイネックスと協業して確保する。

 生産領域のカーボンニュートラル達成のため、日産自動車は工場で使用する電力を再生可能エネルギーや代替エネルギー発電でまかなう計画だ。バイオエタノールと燃料電池システムは将来的に工場で使用する電力の30%を担う重要な電源と位置付けている。燃料電池システムは栃木工場だけでなくグローバルに展開する。

 今後は、燃料電池のセルをメタルサポート(金属支持型)セルに切り替えたり、セル数を増やしたりしながら出力を引き上げていき、2030年に出力20kW以上を目指す。並行して工場内の設備の電化も進める。CO2排出削減だけでなく、買電よりもエネルギーコストを低減することも目指す。


トライアル運用を開始した定置型の燃料電池システム[クリックで拡大]
燃料電池システムの裏側(左)。エタノール貯蔵庫(右)[クリックで拡大] 出所:日産自動車

日産の燃料電池

 日産自動車が手掛けるのは固体酸化物形燃料電池(SOFC)だ。SOFCはエタノールや天然ガス、LPガスなどさまざまな燃料を使うことができるが、工場のカーボンニュートラルに向けてエネルギー収支やコスト、貯蔵や輸送などを踏まえてバイオエタノールを選んだ。

 SOFCは高温で作動する改質器を使って燃料から水素を取り出し、電解質を移動した酸素イオンと反応させて発電するが、発電時の化学反応で水とCO2が発生する。バイオエタノールの原料に採用する植物「ソルガム」が生育する過程で大気中のCO2を吸収すること、ソルガムの根の部分のCO2固定能力が杉の10倍程度と高いことから、SOFCでの発電で発生するCO2排出量は生育時からの差し引きでゼロに近づけることができるとしている。

 SOFCは車載用で一般的な固体分子形燃料電池(PEFC)よりも触媒に使用するレアメタルが少量だが、高温で作動する必要がある。作動時の高温を生かして触媒の活性度を高めることで発電効率を向上しており、PEFCよりも高い70%の発電効率を実現するとしている。過去に日産自動車はSOFCを車両に搭載したFCV(燃料電池車)も試作した。今回の定置用では車載用から進化させ、改質技術の改善によって定常運転時のNOx排出をゼロにしている。

 SOFCには課題もある。600〜800℃の高温で作動するため、急速に起動/停止するのが難しい。燃料電池セルの熱に対する耐久性や、付帯設備を含めた燃料電池モジュールの大きさにも改善の余地がある。日産自動車では解決策として電極を支える部分の素材をセラミックからステンレスに変更し、燃料電池セルの熱に対する強度を向上させる。セラミックは熱によって割れてしまうことがあった。

 これにより、起動停止時間の短縮や急な出力変動要求に対する負荷追従運転が可能になり、将来的に再生可能エネルギーと連携した際にも効果的な運転ができるようになる。メタルサポートセルは大面積化を進めながら2027年ごろに導入予定だ。SOFCが発する熱は工場内のその他の廃熱と同様に活用していく。SOFCから発生するCO2を活用するメタネーション技術にも取り組む。作ったメタンはエタン化の上で樹脂にし、自動車部品に応用していく計画だ。

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