自動車のイノベーショントレンド、2024年の注目技術とは:電動化
進化や革新が著しく進む自動車業界。2024年のイノベーションのトレンドについて、キーサイト・テクノロジー オートモーティブ・ソリューション担当のHwee Yng Yeo氏が解説する。
クルマが世界を支える:V2G(Vehicle-to-Grid)の実現
官民が投資する最も重要な分野の1つが、分散型エネルギー資源です。2023年10月、米国エネルギー省は35億ドルを投じて、風力発電と太陽光発電の容量の拡大と、異常気象に備えるために送電線の強化、バッテリーと電気自動車(EV)を統合した停電時でも電気を維持するためのマイクログリッドを構築することを発表しました。この事業は105億ドルを投じて行われる、送電線の拡張事業、送電網の耐障害性の向上、そして「スマートグリッド」技術の導入の一部です。
EVがVehicle-to-Grid(V2G)に対応するようになると、車両間で双方向な電力供給が可能になる他、蓄えた電力をグリッドに送電できるようになります。しかしながら、V2Gへの対応は、EVとグリッド間の接続が非常に複雑であり、EV用分散型エネルギー資源のメーカーは、市場に参入する前に、複数の規格や認証プロセスを理解し、準拠する必要があります。
全固体電池がコンセプトから現実へ
ソリッドステートドライブ(SSD)が普及するまでに、およそ30年間かかりました。EV用全固体電池は、わずか10年ほど前に研究が始まったにもかかわらず、現在ではファインチューニングする最終段階にあり、以下のさまざまなメリットを自動車メーカーにもたらします。
1つ目は軽量化です。コンパクトで軽量なバッテリーにより、走行距離を増やします。もう1つは安定化です。液体電解質を使用するリチウムイオン電池とは異なり、全固体電池はセラミックやポリマーでできた固体電解質を使用します。これらは安定性と安全性が高く、液体に比べて熱の発生が少なくなります。
さらに、高速化と耐久性というメリットもあります。1000回の充電で劣化が始まるリチウムイオンとは異なり、全固体電池は、15分で80%の充電に達し、5000回の充電後も90%の容量を維持できます。
アジア太平洋地域で躍進
2024年には、全固体電池の研究が活発になり、アジア太平洋地域がリードして市場が成長し、次いで欧州と米国が続くでしょう。例えば、韓国は2030年までに全固体電池を商業化するために150億ドルの投資を発表しました。また、中国のGuangzhou Automobile Groupはさらに積極的なスケジュールを打ち出しており、2026年までに全固体電池を自動車に搭載すると表明しました。
完全自動運転に向けたギャップを埋める
2023年11月、BMWはメルセデスと共同でSAEレベル3の条件付き自動運転を提供しました。ドライバーは、「特定の条件下」では合法的にハンドルから手を離すことができますが、注意メッセージが出るとコントロールを再開するよう求められます。それができなければクルマを安全な停止位置まで自力で誘導します。
2024年、自動車メーカーはレベル3の自動運転機能の改良を続け、一般乗用車への搭載を増やしていくでしょう。同時に、レベル4の自動運転の商用車も継続して増加すると考えられます。しかし、自動運転機能のリスクと責任を最小限に抑えるためには、人間のドライバーの代わりとなるセンサーと判断アルゴリズムについて、設計の検証とテストを何度も繰り返す必要があります。
最大の課題の1つは、ゆったりした田舎道から騒々しく混雑する市街地の交通量、そして道路を鹿が横切るような100万分の1の不測の事態まで、実世界の交通シナリオに対応できるように、アルゴリズムをトレーニングすることです。
自動車に搭載されるシステムや技術が多くなるにつれて、サイバー犯罪者に狙われる攻撃対象も増えています。サイバーハッキングツールの進歩に伴い、セキュリティチームは、車両に対する直接的な攻撃だけでなく、自動車、モビリティアプリケーションやサービス、さらにはEV充電インフラを標的とした脅威を軽減することが課題です。
2024年、自動車業界のエコシステムは、設計から製造、メンテナンスに至るまで、自動車のライフサイクル全体を通じてサイバーセキュリティを強化、向上させる投資を継続するでしょう。これには、車載ネットワーク、通信、EV充電ポートなどの物理層からアプリケーション層プロトコルの保護に至るまでの厳格な車両テストが含まれています。
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