IHI子会社でエンジン試運転のデータを4000台以上改ざん、約半数が仕様未達:品質不正問題
IHIは、子会社であるIHI原動機において、船舶用エンジンと陸上用エンジンの試運転記録に改ざんが見つかったと発表した。
IHIは2024年4月24日、子会社であるIHI原動機において、船舶用エンジンと陸上用エンジンの試運転記録に改ざんが見つかったと発表した。
IHI原動機では2024年2月下旬に従業員からエンジン製品を出荷する際に提出する「燃料消費率」について、実際に試運転で測定された数値と異なる数値に修正されていると申告があった。この申告を受け、IHIとIHI原動機で社内調査を開始し、IHI原動機で保管していた試運転の実測値と、実際に顧客に提出した数値の照合を行い、関係者へのヒアリングを実施し、その結果、IHI原動機 新潟内燃機工場(新潟市東区)、太田工場(群馬県太田市)において不適切な修正が行われていたことが確認された。
2003年以降のデータを調査した結果、該当機種数は船舶用エンジン58機種、陸上用エンジン40機種となる。データ改ざんが行われたのは船舶用エンジンで4215台、陸上用エンジンが146台で、その内船舶用エンジン2046台、陸上用エンジン12台は仕様値を満たさないものとなっていたという。
この結果に対し現時点で各種エンジンの試運転、実際の使用時において安全性に疑義を生じさせる事案は確認されていない。また、IHI原動機では直ちに是正をし現在は実測値での記載が徹底されているという。
該当エンジンに対する規格への抵触については実測値であらためて確認を行っている。船舶用エンジンについては、海洋汚染防止法と国際海事機関が定めるNOx(窒素酸化物)規制において海外向け製品で基準を逸脱している恐れがあるという。さらに、漁船検査規定で定められる燃料油消費率について基準を逸脱している恐れがあるとしている。陸上用エンジンについては燃料消費率を規制する法令や規格はなく、陸上発電用エンジンに関する大気汚染防止法への適合は第三者検査機関によるもので違反なない。
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