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工作機械の加工異常や工具摩耗を検知 完全自動化目指す三菱電機のAI診断ツールJIMTOF2024特別企画

三菱電機は、AIを活用して加工工程の自動化と加工コストの削減を実現するNC加工AI診断ツール「NC MachiningAID」をリリースする。同社はNC MachiningAIDを工作機械の世界的見本市である「第32回日本国際工作機械見本市」(JIMTOF2024)に出展する。

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加工現場の課題を解決して自動化を推進

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三菱電機 産業メカトロニクス製作所 NCシステム部 統括テクニカルセンタの石田哲史氏

 加工現場は厳しい外部変化に苦しんでいる。人材不足が顕在化する一方で加工品の多種化(変種変量生産)が進み、加工精度などの難易度も上がっている。原価低減の要求に対して設備コストや材料費は増えている。三菱電機 産業メカトロニクス製作所 NCシステム部 統括テクニカルセンタの石田哲史氏は「多くの製造現場は特に人手不足に苦しんでおり、自動化やロボットの導入などを進めざるを得なくなっています」と述べる。

 ただ、自動化しても工作機械やロボットなどが常に正しく動作するように正確に管理する必要がある。工作機械の正しい設定や加工ノウハウは、熟練技術者の経験値に基づく知見で対応してきた。これらの管理から加工状況の診断まで自動化して作業工程を完全自動化するというコンセプトで開発されたのがNC加工AI(人工知能)診断ツール「NC MachiningAID」だ。

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製造現場の課題とNC MachiningAIDの役割[クリックで拡大] 提供:三菱電機

NC MachiningAIDの狙い

 NC MachiningAIDは、AIや機械学習、IoT(モノのインターネット)技術を活用して金属切削の加工状態を診断するソフトウェアだ。データを独自技術で収集・分析することで加工異常の検知や工具運用の最適化などが行える。熟練技術の再現やサイクルタイム短縮による電力削減、工具などの廃棄物削減、人的労力や運用コストの低減など、製造現場のさまざまな課題の解決につなげられる。

 加工工程ごとに工作機械の稼働状況や加工物を監視して、複数工具・複数系統による同時加工を診断する。診断機器の構成もシンプルで、同社のWindows搭載NCであればソフトウェアをインストールするだけで使用できる。Windowsを搭載していない機種でも、PCを外付けすれば動作させられる。三菱電機のNCのオプション機能として展開する計画だ。

 工作機械からの情報の取得は、主に電流データを使う。電流の変化からさまざまな状況に応じたデータを適切に抽出するのは難しい。三菱電機は電流データから必要な情報を的確に分離してノイズを除去する技術を蓄積している。そのため電流データのみで工作機械の刃先の微細な変化も捉えて高い精度で加工状況を把握できる。

 「従来、熟練工は加工現場の音を聞いたり加工後の製品の手触りで品質を判断したりする官能検査などで加工品質を保ってきました。自動化が進むとこうした人手を介さなくなり、熟練工が行ってきた“流れの中の官能検査”ができなくなります。そこで、AIや機械学習を駆使してこの領域を自動化する必要がありました。三菱電機は加工現場を熟知しており、AIを含めたデータ活用に関する技術の蓄積もあります。これらを組み合わせることでデータから加工現場の様子を正確に把握できます」(石田氏)

 従来はデータ分析などを中心としていたのに対し、NC MachiningAIDは診断結果をデータとして示すだけでなくより具体的なアクションにひも付けて提示する。現時点では判断は診断結果を受けた人が下す形だが、将来的には完全自動化を想定している。

 「実は同様の機能を2020年に『工作機械工具摩耗診断』という名称で発売しました。しかし当時はシーケンサーを使った診断機能として作成したため使いこなすにはそれなりの技術力を持った人材が必要で、さまざまな現場ですぐに使えるという形ではありませんでした。製造現場の人手不足は当時よりも深刻化しており、専門技術者がいなくても使える製品を目指したのが特徴です」(石田氏)

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NC MachiningAIDの開発で目指したもの[クリックで拡大] 提供:三菱電機

NC MachiningAIDの3つの機能ともたらす価値

 NC MachiningAIDには「加工異常検知」「工具摩耗検知」「作業ミス検知」の3つの機能がある。

 「加工異常検知」は、加工直後に加工異常を検知して加工不良を発見する機能だ。正常加工の状態を自動学習し、異常を検出するとアラームメッセージを表示してアラームを発報するとともに機械を停止させる。従業員が実施していた簡易検査と同じ効果が得られることで、人的労力と加工不良を削減できる。

 「工具摩耗検知」機能は、工具の摩耗状態をデータに基づいて診断して工具の交換時期を最適化する。工具の交換時期は人の経験に頼っていたため、まだ使える工具を交換したりするというムダが発生していた。工具摩耗検知は軸ごとの特徴量と工具使用回数から工具摩耗を検出する特徴量を自動選択し、工具別に工具寿命を自動学習する。この学習結果から工具の劣化(摩耗進行)を予測し、工具の切れ味の限界までの回数を算出する。工具寿命が近づくとアラームメッセージを表示して工具交換を促す。予備の工具と自動で交換できる機械であれば摩耗警告をトリガーに工具を交換でき、機械を停止することなく加工作業を続けることも可能だ。工具の交換回数と購入を最適化することで、年間40%(※)の運用コスト削減が期待できる。

(※)効果は周辺環境や条件によって変わる

 「作業ミス検知」は作業ミスによる不良品生産のリスクを低減する機能だ。生産現場では生産量の変動や多品種生産によって作業が複雑化し、ヒューマンエラー(ポカミス)対策が重要になっている。作業ミスによる加工異常の発生に気付かず、大量の不良品を加工し続けるというリスクも高まってきた。同機能は正常加工の状態を自動学習してそれから外れる異常を検知することで、メンテナンス後のクーラント吐出忘れ、ワークのチャックミス、工具長補正ミスなどの作業ミスを防ぐ。

photophotophoto NC MachingAIDの3つの機能による具体的な価値[クリックで拡大] 提供:三菱電機

NC MachiningAIDの強み

 NC MachiningAIDは、同社のWindows搭載NCであればソフトウェアをインストールするだけで使用できる。Windowsを搭載していない機種でも、PCを外付けすれば動作させられる。データサイエンスや加工診断技術の知識がなくても、機械学習によって加工条件などを見定めて診断条件を設定できる。

 将来的には、最終品質検査と同等の品質まで高める計画だ。現在段階では、電流データで±0.5μm程度の精度変化を把握できるという。「2020年から多数の現場で機能評価を行っており、さまざまな加工条件に接してきた経験を生かしています。チタンなどの金属やセラミックス、炭素材などの切削材料に対応し、さまざまな加工経験を製品に反映できています」(石田氏)

 導入に際してはエンドユーザーが重要視する加工診断対象工程をあらかじめ設定し、それ以降は通常の生産の中で自動的に学習して診断する。設置から本格運用までの学習期間は、ある車載部品メーカーでは約2週間程度だったという。

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三菱電機 産業メカトロニクス製作所 NCシステム部長の竹山徹氏

 同社は、自動車メーカーや車載部品メーカーなどのエンドユーザー企業への提案を進めるとともに、工作機械メーカー向けにNCのオプションツールとして販売する方針だ。三菱電機 産業メカトロニクス製作所 NCシステム部長の竹山徹氏は「機械メーカーからの要求は、これまで切削のスピードや加工精度などが中心でした。しかし、最近は人手不足でエンドユーザーからの自動化への要求が高まっており、機械メーカーもこの対応に苦慮しています。こうした背景から開発したのがNC MachiningAIDです。同製品を用いることで少しでも自動化に貢献したいと考えています」と語る。

 NC MachiningAIDは環境面にも寄与するという。「最近は、PCF(プロダクトカーボンフットプリント:製品のライフサイクル全体における気候変動への影響を評価するもの)が注目されています。工具を長期間使うというアプローチや不良品を出さないといったNC MachiningAIDの利点は、環境負荷軽減につながります。そうした切り口でも訴求していきたいと考えています」

 人手不足が深刻化し、自動化は避けられない状況になっている。自動化するためには加工現場の状況をより正確・簡単に把握することが求められる。NCにソフトウェアをインストールするだけで使えるNC MachiningAIDは、有効なツールの一つだと言えるだろう。

本記事で紹介したNC MachiningAIDをJIMTOF2024に出展!

 三菱電機は、本記事で紹介した「NC MachiningAID」をJIMTOF2024に出展します。会場ではマシニングセンターと旋盤を模したデモ機を展示し、NC MachiningAIDが診断している様子を披露します。東京ビッグサイトで2024年11月5日(火)〜11月10日(日)に開催されますのでぜひご来場ください。

 三菱電機 産業メカトロニクス事業部 NC事業推進部 戦略グループの伴野公平氏は「NC MachiningAIDと周辺機器との組み合わせ、使い方の広がりなど将来的な取り組みを紹介します。11月8日(金)には出展者ワークショップとしてJIMTOF会場にて、より詳細な講座を行います。10月31日(木)まで申し込みを受けつけておりますので、奮ってご応募ください」と述べています。

  • ブース位置:南2ホール S2002
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JIMTOFスペシャルページ[クリックでWebサイトへ]

出展者ワークショップ

  • タイトル:NC加工AI診断ツール「NC MachiningAID」〜三菱電機CNCが目指す完全自動化ライン〜
  • 講師:石田哲史氏
  • 開催日時:2024年11月8日(金)11:00〜12:00
  • 詳細内容:熟練工不足やコスト増加などの問題に直面する加工業界。加工IoTデータを収集・診断することで、品質不良の防止と加工最適化によるコスト削減を実現します。
  • 募集方法:こちらの申し込みページからお申し込みください

提供:三菱電機株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2024年11月22日

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