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第17回 ファンの流体解析を手軽に! ファン設計ツールSmartBladesモデリングから最適化まで簡単操作

CADやCFDに慣れていない人でも簡単に操作できるファン設計ツールが登場する予定だ。流体解析ツール「SCRYU/Tetra」のオプション製品として、ファンの形状作成から解析、最適化までを自動で行う「SmartBlades」は、ファン設計のさまざまなシーンで役に立ちそうだ。

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 ファンの開発者、またはファンを内蔵する製品の開発者に朗報だ。ソフトウェアクレイドルでは、同社の流体解析ツール「SCRYU/Tetra」のオプション製品として、ファンの形状作成から解析、最適化までを自動で行う「SmartBlades」を開発している。ファンの形状パラメータや各条件を設定すると、形状・メッシュの作成および計算、ポスト処理を自動で手軽に行うことができる。ファンを設計する企業での事前検討や、ファンを利用するセットメーカーにおけるファンの社内検討、また解析をしたことがない人の入門ツールなど、ファンを利用するさまざまなシーンで役に立ちそうだ。

操作の簡易性を重視

 ソフトウェアクレイドルでは、半導体パッケージ部品の作成ツールや建築業界向けのBIM(ビルディングインフォメーションモデル)オプションなど、用途に応じた個別オプションを提供している。今回はその中でもファン専用のツールとなる。「従来から分野にかかわらず、設計者の中に自分の手で手軽に解析結果を見てみたいというニーズがあった」(ソフトウェアクレイドル 営業二部 主任の奥田耕治氏)といい、今回のツールもその声に応えたものになる。SmartBladesの特徴は、ファンモデルの作成から最適化までを簡単に行えることだ。通常はCADにおけるモデリングから始まり、CFDでの解析用モデルの作成、メッシュの作成の後、解析設定の入力および計算、ポスト処理、そしてCADで形状を修正して同じサイクルを繰り返す。

 SmartBladesでのモデリングは、デフォルトの形状のパラメータを変化させて決定する。必要な値を入力して羽根形状を作成するのに10分程度しかかからないという。続いて解析モデルおよびメッシュの生成を行い、計算、ポスト処理といった計算工程が自動で行われる。そして選択した最適化の手法に従って、再び羽根形状の作成から計算工程までを自動で繰り返す。ソフトウェアクレイドルの示した例では、3カ月かかる作業が1週間で終わるという(図1)。CADとCFDを行き来することがなく自動最適化を行えるため、設計時間を大幅に短縮できるというわけだ。

図1
図1 設計フロー例

 使用例として挙げたのが、自動車のラジエータ(熱交換器)である。ファンが内蔵されているが風の当たり方にムラが出たりするため、そういった場合は専用のファンをオーダーすることもある。その際にSmartBladesを使えば、手軽に形状を検討することができるという。「ファンを使用するが解析はしていないメーカーがファンを専業メーカーに発注する場合、何も分からず依頼していたのが、自分の手で検討した上で提案できるようになる」とソフトウェアクレイドル 技術部 技術二課 課長代理の伊丹隆夫氏は言う。これによりお互いに具体的な話し合いをしやすくなり、コミュニケーションをスムーズかつ的確に行うツールとしても活用できる可能性があるというわけだ。コンセプト決定の段階で性能を大まかに評価するといった用途に使えるかもしれない。また従来からあるファンを選定する場合でも、自分で形状を検討、考察することにも使えるだろう。

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ソフトウェアクレイドル 技術部 技術二課 課長代理の伊丹隆夫氏(左)と営業二部 主任の奥田耕治氏(右)

直感的な操作で最適化

 SmartBladesではファンの独特な曲面を自分で設計する必要がない。羽根の枚数や段数(ファンの個数)、ボス径、またレーキ角や翼弦長/直径比などの値を順に入力していくだけだ(図2)。レーキ角やスキュー角、厚みなどのパラメータはグラフ上の点をドラッグすることで直感的に調整することも可能である(図3)。パラメータはデフォルトで入力されているため、変更したいところだけ入力すればよい。最適化法についてはタグチメソッドやFeasible Directions Methodなどが用意される。

図2
図2 詳細パラメータの例
図3
図3 ファン形状をパラメトリックに作成

 このツールにはベテランが手軽に検討するという以外の使い方も考えられる。つまりCADだけでなくCFDに慣れていない人でも簡単に操作できるということだ。CFDは以前より敷居が低くなってきたとはいえ、まだ難しい面があるのも事実だ。通常は形状やメッシュの作成からはじまり、解析条件の設定など習熟が必要なことが多くある。また解析を実行しても、いつもスムーズに計算結果が出るとは限らない。SmartBladesはそこを改善する。形状を変化させることによって流れの変化の傾向を知ることも比較的簡単だ。そのため解析を始めたばかりの人や教育機関での入門的な位置付けでも使えるという。

要望を盛り込みながら進化させる

 2014年6月25〜27日にビッグサイトで行われた設計・製造ソリューション展(DMS2014)でSmartBladesを参考出展したところ、さまざまな反応を得られたという。それらも考慮しながらより使いやすいツールを目指していきたいということだ。10月ごろにSCRYU/Tetraのオプションとして提供する予定としている。現在は軸流ファンのみに対応しているが、要望があればシロッコファンやターボファンなどへの展開といった可能性もあり得る。今後も多くの意見を取り入れて、より役立つツールへとブラッシュアップしていきたいということだ。

 SmartBladesは大型の送風機メーカーや一点物の産業用のファンなどを作っている企業、電子機器向けファンのメーカーや教育機関などのさまざまなシーンで活用できそうだ。このようなファンに関わるメーカーは検討の価値があるだろう。

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提供:株式会社ソフトウェアクレイドル
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2014年8月21日

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