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第15回 トンボの飛翔を風車に! マイクロ流体の面白さを産業に役立てるソフトウェアクレイドル・ユーザーカンファレンスレポ

毎年、日本各地の解析ソフトウェアユーザーが大集結する、ソフトウェアクレイドルのユーザーカンファレンス。2013年度の特別講演は、日本文理大学 工学部航空宇宙工学科 教授兼マイクロ流体技術研究所 所長の小幡章氏が登壇し、トンボの飛翔の仕組みと興味深いマイクロ流体の性質や、その産業分野への応用について紹介した。

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 2013年10月18日、ソフトウェアクレイドルの「ユーザーカンファレンス2013」が、セルリアンタワー東急ホテル(東京都渋谷区)で開催された。当日は昆虫の飛翔に基づくマイクロ流体の研究およびその応用を語った特別講演や、同社のソフトウェアの新機能解説および今後の開発ロードマップ、ユーザーによる多彩な事例紹介など充実した内容となった。

 今回は申し込み数が昨年(2012年)より多い約450人となり、昨年から実施している大阪サテライト会場(大阪第一ホテル)の収容人数を広げるなど、前回を上回る規模となった。ここではソフトウェアクレイドルの講演および特別講演を中心に紹介する。

海外拠点網をさらに拡充するソフトウェアクレイドル


ソフトウェアクレイドル 代表取締役 駒田一郎氏

 2013年はソフトウェアクレイドルにとって創立30周年の節目に当たる。カンファレンスの始めに、まず代表取締役の駒田一郎氏が開会のあいさつに立ち、「長く事業を継続できたことは喜ばしいことであるとともに、お越しいただいた皆さまやユーザーの皆さまの力添えがあったからこそ」と述べた。

 現在ソフトウェアクレイドルは、海外でより拡販するために、さらなる海外拠点網の整備・拡大を進めている。2013年7月にはインドの関連会社 Contravolts Infotech、2013年9月に同社子会社 Cradle North Americaのフランスオフィスを設立。さらに中南米の拠点としてメキシコGlobal Computingとの代理店契約締結などを始めとした海外展開を図っているという。

トンボ風車が生まれるまで


日本文理大学 工学部航空宇宙工学科 教授/マイクロ流体技術研究所 所長 小幡章氏

 「トンボ風車が生まれるまで」と題した特別講演に登壇したのは、日本文理大学 工学部航空宇宙工学科 教授兼マイクロ流体技術研究所 所長の小幡章氏だ。小幡氏は空気力学や飛行力学を専門としている。

 日本飛行機で小惑星探査機「はやぶさ」などの開発に携わったのち、2001年に日本文理大学において教授に就任。2005年に文部科学省のハイテクリサーチ整備事業に採択されたマイクロ流体技術研究所による「昆虫型超小型飛翔ロボットの研究開発」プロジェクトに参画することになった。

 小幡氏は以前から「超低速流の渦の動きの美しさ」にひかれて研究を進めるうちに、流線を見ることのできる高さ30cm程度の小型の可視化水槽の製作に成功した。プロジェクトでは、その研究をベースにしながら、さらに流れを見やすくする大型可視化水槽を開発することになった。そこではハイテクな設備を使わなくても簡単に本格的な実験ができ、未知だった現象が次々と明らかになっていった。


水槽内で、トンボの翅(はね)形状の周囲に現れる美しい渦:翅は金型で製作した模型

 トンボのサイズほど小型になると、レイノルズ数(慣性力と粘性力との比)が上がり、空気の粘性力の影響が大きくなる。トンボは翅の凹凸によって次々とまわりに小さな渦を作って後ろに追いやり、しかも揚力を出していることが明らかにした。一方、流線型の翼は高速では性能を発揮するが、低速では揚力を出せず全く飛べないことも分かったという。

 小幡氏は4gの翼断面形だけトンボを模した単発プロペラの双翅型の飛翔ロボットを作り、秒速4mの速さで飛ばすことに成功した(以下の動画)。

動画が取得できませんでした
ユニークな飛び方をするトンボ型飛翔ロボット

 翼をトンボのように凹凸に加工することによって格段に安定性を向上させられることを確認した。

 さらに紙飛行機をたくさん作って調べることにより、4枚の翅(はね)によって安定した姿勢を保てることも分かった。正面から見て翅がX型になるように前後の羽根をずらすと落ちずに飛ぶことも判明した。小型機の重要な課題の1つが「どれだけ長く飛ばせるか」だが、市販の飛行機は5分間で、それを改造した「トンボ型飛翔ロボ」は13分間飛ばすことができたという。

トンボの翅を小型風車に応用

 トンボの翅の研究を応用して取り組んだのが、小型風車の研究だ。日本の各地によって平均風速は違い、秒速6m以上の地域では発電用の大型風車が多く設置されている。だが多くの土地では秒速2〜3m程度であり、大型風車は性能を発揮できない。一方トンボの翅を応用した小型風車は低速で性能に優れるため、そういった地域でも有望だ。さらに強風になるに従って性能は発揮しないものの、羽根がしなって風圧を受け流す。材料にPETを使って実験をしたところ、秒速40m以上でも異常を示さなかった。

 現在制作しているものは、4連で5Wの電力を生じ、ニッケル水素蓄電池4個が毎日いっぱいになる程度の量だそうだ。例えばモンゴルの移動式住居であるパオのLED照明であればまかなえるだろうという。さらに水車への応用の可能性も研究している。「水車は首振りがないため、風車よりも開発はずっと楽」とのことだ。

新バージョンはUIと機能の両面で進化

 ソフトウェアクレイドルの「SCRYU/Tetra®」をはじめとする各ソフトウェアの新バージョンについて、東京支社 副支社長の久芳将之氏から紹介があった。新バージョンのV11は2013年11月8日にリリースされる予定だ。同製品は同社Webサイトからダウンロードして利用するが、前回よりもネットワーク回線を強化しているという。その後2014年にはV12 RC1、RC2を、2015年にV12をリリースする計画だという。


ソフトウェアクレイドル東京支社 副支社長 久芳将之氏

 今回のバージョンアップではユーザーインタフェースの改善やデータの読み込みなど各機能の改善や追加が行われている。各ソフトウェアの共通事項としては、起動ツールバーの操作自由度を高める、流体の表示のバリエーションを増やす、また「STREAM®」と「熱設計PAC」の間での行き来をしやすくなるなどの改善を行った。

 またSTREAM®単体では読み込み可能なデータ形式の追加やメッシュの高機能化、また移動体の輻射への対応など新たな追加機能が搭載される。SCRYU/Tetra®では項目ごとの単位選択機能や部品に基づくラッピングなどの機能をリリースする。また密度ベースソルバの機能強化も行う。「新しいバージョンをぜひ使ってほしい」(久芳氏)とのことだ。

 これらの講演の後に続いては10本の事例紹介を中心とした講演が行われた。流体に関わる人にとっては非常に充実したイベントとなった。

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提供:株式会社ソフトウェアクレイドル
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2013年12月12日

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