データセンターと半導体に高い成長期待、シュナイダーが見据える新世界:FAインタビュー(1/3 ページ)
脱炭素化や人手不足、地政学リスクへの対応など、多くの課題に直面する製造業において、どのようなニーズが生まれ、ビジネスが動こうとしているのか。シュナイダーエレクトリックに話を聞いた。
脱炭素化や人手不足、地政学リスクへの対応など、製造業は多くの課題に直面している。その中でどのようなニーズが生まれ、ビジネスが動こうとしているのか。エネルギーマネジメントと産業用オートメーションを柱とするシュナイダーエレクトリック(Schneider Electric) ジャパンカントリープレジデントの青柳亮子氏、同社 インダストリー事業部 バイスプレジデントの角田裕也氏に話を聞いた。
5つのメガトレンド、共通化する企業の課題
MONOist シュナイダーエレクトリック(以下、シュナイダー)はエネルギーマネジメントと産業用オートメーションを柱としていますが、それぞれの領域で今、どのような課題を企業は抱えていますか。
青柳氏 われわれは「気候変動」「新たなグローバル社会の均衡」「デジタル化とAI」「エネルギー転換」「富の構造的変化」という5つをメガトレンドだと捉えている。それが影響してエネルギーマネジメントと産業用オートメーションで顧客を分けることが難しくなってきている。
気候変動は世界的な課題となっており、原因とされる温室効果ガスを削減するカーボンニュートラルへの対応が企業に求められている。製造業の顧客にエネルギーマネジメントのニーズがあり、その逆もしかりだ。エネルギーマネジメントの顧客にもオートメーションのニーズがある。
新たなグローバル社会の均衡では、ロシアによるウクライナ侵攻などによって経済的な分断が進んでいくことで、製造拠点やサプライチェーンの再編、国内回帰などの現象が起こっている。多くの企業がデュアルソーシングも取り組んでいる。
デジタル化とAI(人工知能)に関しては、生成AIの利用は検索に比べて消費する電力が大きい。AI需要に対応したデータセンターの建設も相次いでいるが、電力消費を抑える技術も同時に開発しなければならない。
現在、電力にアクセスできない未電化の人口が約10億人いるとされていて、さらに今後、世界の人口は約20億人増加する。つまり新たに約30億人に電力を供給しながらCO2を削減しなければならない。
富の構造的変化では、今後、経済的な主導権は人口が増加するインド、中東、アフリカといった地域に移行していくことになる。エネルギー需要が増えているのもそれらの国々だ。
これらの流れを踏まえてわれわれの顧客のゴール、目指しているものというのは共通化されてきている。
高まるライトハウス認定への関心
角田氏 オートメーションでも単にロボットなどを導入して自動化を進めればいいのではなく、その中でいかに消費電力を抑えるかという意識も高まっている。例えば、CO2排出量や電気使用量の抑制につながる、空圧機器から電動化への切り替えが1つのトレンドになっている。
今までのオートメーションはどれだけたくさん、品質の高い製品を出荷できるか、ということが目的だった。それに加えて、いかに電力消費やCO2排出を最適化できるかというところまで意識が高まってきている。
ある半導体メーカーでは、その部品や素材がどれだけ環境に配慮されているか、その部素材を作っている企業がどれだけ環境への配慮に取り組んでいるかも調達基準として見ており、多少価格が上がっても、そういった取り組みを進めている企業から製品を購入したいという意識に変わってきている。
日本のモノづくり企業でも、そういった取り組みを対外的に認めてもらい、企業価値を上げていくことに目を向けだしており、われわれが提供するライトハウス※認定取得サポートへの問い合わせも増えている。
※…先端技術を活用して生産性向上や品質改善、コスト削減、環境配慮などを進め、模範的なライトハウス(灯台)となる工場として世界経済フォーラムが選出する。
青柳氏 カーボンニュートラルを目指して工場などで再生可能エネルギーを導入し、太陽光発電システムのPCS(Power Conditioning System)やインバーター、EV(電気自動車)用のチャージャーが増えてくると電力品質に影響を及ぼす。半導体産業やライフサイエンス産業などでは電力品質が製品品質に大きく影響する。そこで、電力だけでなく電力品質も監視することができる、われわれのEcoStruxure ソフトウェア「Power Monitoring Expert」などへの関心も高まっている。
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