ウシオ電機がPFOSやPFOAを分解/無害化できる技術を開発 触媒や添加物は不要:材料技術
ウシオ電機はペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)やペルフルオロオクタン酸(PFOA)を、触媒や添加物を使用せず光を用いて1リアクターで分解/無害化できる技術を開発した。
ウシオ電機は2025年1月16日、環境規制物質として注目されている有機フッ素化合物(PFAS)のうち、代表的な物質であるペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)を、触媒や添加物を使用せず光を用いて1リアクターで分解/無害化できる技術を開発したと発表した。
同技術の特徴
同技術は、波長172nmの紫外線を発するエキシマランプやヒドロキシルラジカル(OH)ラジカル、水和電子を用いてPFOAとPFOSを分解する。この技術は常温常圧でPFOAとPFOSを分解できる他、焼却用の燃料、触媒、化学薬品添加物が不要で、光と電気エネルギーだけで分解可能。分解反応の過程で想定外のフッ素化合物もできにくく、短鎖PFAS分子の分解にも対応する。
この技術で分解後に残った最終的な物質であるフッ化水素(HF)、水素イオン(H+)、フッ素(F-)は、水酸化カルシウムで最終処理することでフッ化カルシウムとして固定安定化でき、別の用途で使える。この技術とPFAS濃縮技術との組み合わせにより高い分解効率を実現できる。
同社はこの技術によりmg/L単位のPFOA、PFOSであっても一定時間で99%を分解できることを確認している。
同技術の開発背景
PFASは、人体への健康被害の実例が報告されて以降、欧米をはじめとする地域で排出が規制されているが、その難分解性から除去/無害化手法の確立が喫緊の課題となっている。PFASの分解方法としては現在、活性炭で吸着後に焼却する高温焼却処理が検討されているが、吸着した活性炭の輸送、焼却のための燃料やそのエネルギーの消費、さらには活性炭焼却由来のCO2や温暖化係数が高いフッ素系温暖化ガスの大気放出が懸念されている。
そこでウシオ電機は、真空紫外線技術を応用してPFASを分解/無害化できる技術を開発した。
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