PFASフリーの自動車向け潤滑油用消泡剤を開発、性能も従来品同等以上:材料技術
DICは、PFASフリーの電気自動車向け潤滑油用消泡剤を開発した。従来のPFASフリー品では難しかった、高い消泡性と熱安定性、高耐久性を持つ。今後、日米欧の潤滑油メーカーに拡販を図り、2030年には売上高20億円を目指す。
DICは2024年1月30日、PFAS(有機フッ素化合物の総称)フリーの電気自動車(EV)向け潤滑油用消泡剤を開発したと発表した。従来のPFASフリー品では難しかった、高い消泡性と熱安定性、高耐久性(高いせん断安定性)を持つ。今後、日米欧の潤滑油メーカーに拡販を図り、2030年には売上高20億円を目指す。
PFAS系消泡剤は、潤滑油への少量の添加により表面張力を下げ、泡膜を破裂させる性質を保有し、金属加工用潤滑油や自動車用、工業用ギアオイルなど多様な産業分野で幅広く使われてきた。それに対して、一般的なシリコーン系消泡剤では、PFAS系製品と同等の性能を発現するのは難しい。
同開発品は、環境配慮の原料とDIC独自の分子設計技術を採用。一般的なシリコーン系製品では難しかった、高温エリアでの高い消泡性を有する。また、潤滑油としての利用時にかかる熱や、機械的負荷(せん断)に対する高耐久性を備えた。PFAS系消泡剤と比較しても、100℃における消泡性能は同レベルで、せん断安定性は優位となっている。
PFASは、環境に対する潜在的リスクから、欧米を中心に規制の対象として議論されている。同社は、その対応として、PFASの代替品の開発に取り掛かり、2023年8月にはPFASフリーかつPFAS系と同レベルの高い性能を有する界面活性剤「MEGAFACE EFS」シリーズを開発した。今回の開発品は、これに続く第2弾のPFASフリー製品となる。
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