CNCによる機械加工の進化〜第2期後半 複合加工機と5軸加工機の登場:CNC発展の歴史からひもとく工作機械の制御技術(4)(1/3 ページ)
本連載では、工作機械史上最大の発明といわれるCNCの歴史をひもとくことで、今後のCNCと工作機械の発展の方向性を考察する。連載第4回目の今回は、CNC機が工作機械の標準になり、5軸加工機などが登場した時期に焦点を当てる。
本連載では、工作機械史上最大の発明といわれるCNCの歴史をひもとくことで、今後のCNCと工作機械の発展の方向性を考察する。連載4回目の今回は、第2期である1974〜1997年の後半について解説する。
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この時期にはCNC機の比率が高まり工作機械の標準になっていったのだが、特に後半の時期には同時5軸制御などといった数値演算部の機能や、工作機械のユーザーが操作するHMIソフトウェアが大きく発展した。
これらの機能が備わっていったことにより、機械加工技術が進化してこれまでには難しかった製品が加工できるようになったり、オペレーターのスキルに依存しない工作機械の操作が可能となったりといった変化があった。このあたりの発展の経緯について紹介したいと思う。
複合加工機〜旋盤にミーリングの機能を備えた加工機
最初に、CNC機能の発展が製造工程を進化させた例を紹介する。
これまでの工作機械では、旋削加工とミーリング加工の機械は分かれているのが通常だった。そのため、旋削加工が終わった後にはミーリング加工を行うマシニングセンタにワークを乗せ換えることが必要だった。
これを効率よくするために、ミーリング機能を搭載した旋盤が登場する。これが複合加工機である。
素材ワークを主軸に取り付け、主軸を回転させてバイト工具を用いて旋削加工を行う。その後、ワークを取り外すことなく、ドリルやエンドミルを把持したミーリングユニットを用いて穴あけ加工や形状加工を行うのである。旋削加工に使用した主軸は、ミーリング加工の時には位置決めや同期制御に使用されることになる。
複合加工機を用いるメリットは、旋削加工後にワークを載せ替える必要がないいということはもちろん、これまではミーリング加工機にワークを移した後に実施していた原点設定などの段取作業も必要がないということにある。ワンチャックで同一の機械で加工を行うと、部品の加工原点を共通して利用することができるため、加工品質も向上するのである。
複合加工機の実現のためには、CNCについても機能開発が必要だった。なぜなら旋盤用のCNCとミーリング用のCNCは分かれて発展してきていたため、その両方の機能を持ったCNCが存在しなかったのである。そこで複合加工機のためのCNCとして、旋盤用のCNCにミーリング用のCNC機能を搭載したものが開発された。
複合加工機の開発に、早くから積極的に取り組んだのがヤマザキマザックである。1980年に開発した「SLANT TURN 30 ミルセンタ」はタレット旋盤にミーリング加工を行うためのユニットを組み合わせた複合加工機だった。
これを改良した「SLANT TURN 40N ミルセンタ」を図2に示す。工具を交換するためのタレットに、複数のミーリング工具が装着されているのが見てとれるだろう。タレットが回転することでミーリング工具を選択し、一般的な旋盤軸であるX軸(直径方向)、Z軸(軸方向)、C軸(主軸回転)の3軸により旋削加工とミーリング加工を行う機械である。
図2 ヤマザキマザックが1981年に開発した複合加工機「SLANT TURN 40N ミルセンタ」[クリックで外部サイトへリンク]出典:「生産技術の複雑化−複合加工機の開発−」(著者:鈴木信貴、東京大学ものづくり経営研究センター、2010年5月)
その後も複合加工機は進化を続ける。
ヤマザキマザックは1983年に「SLANT TURN 40N ATC」を開発した(図3)。これはATC装置を持ち、マガジンに収納された30本のミーリング工具を自動交換して加工することが可能だった。
また、1988年には「INTEGREX 40ATC ミルセンタ」を開発した。これにはY軸(工具上下軸)が追加されて4軸構成となっており、ワークに対してXYZ軸を用いてマシニングセンタのようなミーリング加工を行うことが可能だった。
さらに、それまでのXYZC軸に加えて、ミーリングユニットを旋回させるB軸を搭載した機械が登場する。1997年にヤマザキマザックが開発した「INTEGREX 200Y」である。ミーリング工具を旋回させることで斜め穴加工などが可能だった。
図3 ヤマザキマザックが1983年に開発した複合加工機「SLANT TURN 40N ATC」[クリックで外部サイトへリンク]出典:「生産技術の複雑化−複合加工機の開発−」(著者:鈴木信貴、東京大学ものづくり経営研究センター、2010年5月)
CNCについてもこうした機械の進化に伴い、旋盤用の機能とマシニングセンタ用の機能の両方を備えることになった。CNCに搭載された対話式プログラミング機能についても、複合加工機に対応するように拡張がなされていった。
ヤマザキマザックはこのようにさまざまな複合加工機を開発し、この分野で先行していった。これに続くような形でオークマや森精機(現DMG森精機)も同様の複合加工機を開発して製品化を進めていった。
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