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FreeCADってどんな3D CAD? 簡単なモデリングから始めてみよう無償3D CAD「FreeCAD」を使ってみよう(1)(1/7 ページ)

オープンソースの3D CAD「FreeCAD」をご存じだろうか。無償でありながら、3Dモデリング、メッシュデザイン、製図(ドラフト)、有限要素法解析(FEM)、レイトレーシング、ロボティクス機能など、標準機能がとにかく充実している。本連載では「FreeCAD 0.18」を用いて各機能の実際の操作や使用感を紹介していく。連載第1回では、スケッチとモデリング機能について取り上げる。

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FreeCADを試す!

 「FreeCAD」は、20年近い歴史を誇る無償のパラメトリック3D CADだ。ソフトウェアはオープンソース化されており、2002年から世界中の有志により開発されている。基盤とするジオメトリカーネルは、1990年代に存在した3D CAD「CAS.CADE」のプログラムをオープンソース化した「OpenCasCade」を採用する。FreeCADは海外発のプロジェクトとして知られているが、国内では日本人の開発者(有志)たちが日本語版を作ってリリースしている。

 FreeCADは、無償のソフトウェアでありながら、3Dモデリング、メッシュデザイン、製図(ドラフト)、有限要素法解析(FEM)、レイトレーシング、ロボティクス機能など、標準機能がとにかく充実している。

 本連載では、記事公開時点で最新となる「FreeCAD 0.18」を用いて、3Dモデリングやドラフト、FEMといった各機能を、実際に筆者が体験しながら紹介していく。なお、2015年8月26日に掲載した「オープンソースの無償3D CAD『FreeCAD』を使ってみた」の改訂版の意味も兼ねる。

図1 「FreeCAD 0.18」の起動画面
図1 「FreeCAD 0.18」の起動画面 [クリックで拡大]

FreeCADは、やや玄人向き!?

 正直なところ、3D CADのオペレーションをある程度知っている人であれば問題ないだろうが、初心者の場合、FreeCADのGUIをすぐに使いこなすことは難しいだろう。最近の3D CADのように、やろうとしている作業に合わせてアイコン配列が変わったり、機能を提案してくれたりするようなこともない。

 さらに、最近の3D CADはパラメトリックCAD系でも、面を直接選べば変形できるダイレクトモデリングを取り入れた操作になっている。しかし、FreeCADはダイレクトモデラーを一切備えていない。また、FreeCADの場合、[Esc(エスケープ)]キーで容易に機能を抜けてしまうため、その都度コマンドの[終了]を選択して作業を終わらせる一般的なCADの操作に慣れていると、やはり戸惑うかもしれない。

 「世の中には、便利で簡単な3D CADがたくさんあるのに、あえて不便な3D CADを使って、何の得があるのか?」と疑問に思うかもしれないが、それぞれ得意不得意があるわけで、結局のところ「その一長一短を、どう評価するか」であると筆者は考える。

 まず、FreeCADの特徴として挙げられるのが、「無償であるとともに、会員登録や個人情報の入力が不要である」という点だ。ユーザー登録後の個人情報の扱いが心配な人や、開発元の宣伝や勧誘などが不快な人にとってはよいかもしれない。しかし、これは自力で情報収集して、問題を自分で解決していかなければならないことも意味する。デスクトップにインストールして使用するソフトウェアであり、クラウド型のソフトウェアでもないため、アップデートの情報も自分でチェックしなければならない。

 また、FreeCADの場合、フィーチャーとパラメトリックのツリー管理がミッドレンジ3D CADの感覚に近い(これもダイレクトモデラーに慣れてしまった人であれば、あまり用がないかもしれないが……)。

 さらに、FreeCADは冒頭で説明したような豊富な標準機能と併せて、プログラミング言語「Python」のスクリプトを使ったカスタマイズや自動化、機能拡張が可能だ。ソフトウェアの機能やアーキテクチャを学んでいけば、自在に自分好みの3D CADにできるわけだが、プログラミングに詳しくない、あるいは詳しく勉強する気がない人にとってはあまり価値がないかもしれない。

 このように一長一短のあるFreeCADだが、「CAD初心者にはあまり向かない3D CADである」というのが筆者個人としての正直な感想だ。逆に、十数年以上前の、今よりもずっと不便だった3D CADから入門した人であれば、比較的なじみやすいかもしれない。

 とはいえ今回の連載では、最近の3D CADから入門した人や、3D CAD自体が初めての人でも、なるべく理解しやすいように解説を進めていきたい。入門者もFreeCADでの手順を経験しておけば、3D CADのモデリングの原理を知ることができるため、他の3D CAD習得の助けになる。

 FreeCAD 0.18は、公式Webサイトから入手できる。Webサイトからインストーラーをダウンロードしたら、それを起動してウィザードに従ってインストールすればよい。個人情報やライセンスキーなどの入力も必要ない。ちなみに、対応OSはWindows、macOS、Linuxと充実している。動作環境の推奨スペックなどについては公式Webサイトで確認してほしい。

図2 「FreeCAD 0.18」のセットアップ画面。「このコンピュータを使用している全ての人用にインストールする」か「自分専用にインストールする」かが選べる
図2 「FreeCAD 0.18」のセットアップ画面。「このコンピュータを使用している全ての人用にインストールする」か「自分専用にインストールする」かが選べる [クリックで拡大]

 今回取り上げるFreeCAD 0.18は2019年3月にリリースされたもので、次期バージョンの「FreeCAD 0.19」は2020年中のリリース予定だという(記事公開時点)。

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