今回は、膜分離の種類と成分を分ける仕組み、逆浸透の原理、膜の性能を表す指標と運転上の注意点について、逆浸透膜を題材に解説します。
膜分離は、混合物を薄い膜に透過しやすい成分と透過しにくい成分に分ける操作です。有名な用途は、海水淡水化や家庭用の浄水器です。化学プラントでは、排水の処理と再利用、超純水の製造、空気からの窒素の製造などに使われています。
多くの膜分離に共通する特徴は、液を蒸発させずに分離できることです。蒸留(連載第14回)では液を沸騰させて成分を分けますが、膜分離の1つである逆浸透膜ではポンプで圧力をかけて膜を通すことで分離します。蒸発に使う熱を減らせることが魅力です。ただし、ポンプ動力や膜の洗浄/交換が必要であり、膜分離が常に蒸留より優れているとは限りません。
膜の両側に圧力や濃度などの差があると、高い方から低い方への物質移動が生じます。この差が膜分離の駆動力です。
圧力差は、液体と気体で駆動力が異なります。液体の精密ろ過(MF:Microfiltration)や限外ろ過(UF:Ultrafiltration)、ナノろ過(NF:Nanofiltration)、逆浸透(RO:Reverse Osmosis)では、主に膜の両側に与える液体の圧力差を利用します。対してガス分離膜では、成分ごとの分圧差が駆動力です。濃度差では、濃度の高い側から低い側へ、膜を透過できる成分が拡散します。血液から老廃物を取り除く人工透析が代表例です。電位差は、電圧によってイオンを選択的に移動させる方式です。電気透析と呼ばれます。日本の製塩で海水の濃縮に用いられるのも、この方式です。
圧力駆動の水処理用膜は、大きな粒子を分けるものから溶けた塩を取り除くものまであります。主に精密ろ過、限外ろ過、ナノろ過、逆浸透の4種類に分類できます(図1)。
精密ろ過が分離する粒子の大きさは、およそ0.02〜10μmです。細菌や、水の濁りの原因になる懸濁粒子を除くために使われます。限外ろ過は、それより小さいタンパク質のような高分子やコロイドを分離する膜です。こうした高分子は粒子ではなく溶けた状態で存在し、形も定めにくいため、限外ろ過膜の性能は大きさではなく分画分子量で表すのが一般的です。分画分子量は、分子量の分かっている標準物質の阻止率が90%になる分子量の目安を指します。
ナノろ過は、分画分子量がおよそ200〜1000で、限外ろ過と逆浸透の中間にあたる膜です。食塩は一部が通り抜けますが、水の硬さのもとになるカルシウムやマグネシウムは減らせるため、井戸水の軟水化に使われます。逆浸透膜は溶けた塩の95%から99%以上を阻止できるため、海水淡水化や超純水の製造に用いられます。
精密ろ過と限外ろ過は、膜の孔より大きい成分を通さない、ふるいと同じ仕組みが中心です。ナノろ過では、分子の大きさに加えて、膜とイオンとの電気的な相互作用も分離に影響します。逆浸透膜は緻密な分離層を持ち、孔の大きさだけでは性能を評価できません。水が膜の素材に溶け込み、膜の中を拡散して反対側へ抜けるからです。このように成分ごとの溶けやすさと拡散のしやすさの差で分ける仕組みが、溶解拡散です。
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