付加価値の35%が固定資本減耗に、日本の製造業はなぜ利益が残らないのか:小川製作所のスキマ時間にながめる経済データ(52)(2/3 ページ)

» 2026年10月26日 07時00分 公開

日本製造業の本業の利益は多いのか?

 ここでは、製造業の本業の利益となる営業余剰・混合所得について、労働者1人あたりの金額水準で国際比較してみます。まずは、固定資本減耗を含んだ営業余剰・混合所得(総)から見ていきましょう。

  • 営業余剰・混合所得(総) = 営業余剰・混合所得(純) + 固定資本減耗

 図4は、営業余剰・混合所得(総)の労働者1人あたりの為替レート換算値における国際比較を示しています。

photo 図4:製造業における営業余剰・混合所得(総)の労働者1人あたりの為替レート換算値[クリックで拡大] 出所:OECD Data Explorerを基に筆者にて作成

 労働者1人あたりのドル換算値で見ると、日本の製造業は主要先進国の中で相対的に高めの水準が継続してきました。日本の製造業では手元に残る利益が比較的多いといえそうです。

 次に、この指標から固定資本減耗を差し引いた営業余剰・混合所得(純)について確認してみましょう。図5は、営業余剰・混合所得(純)の国際比較です。

photo 図5:製造業における営業余剰・混合所得(純)の労働者1人あたりの為替レート換算値[クリックで拡大] 出所:OECD Data Explorerを基に筆者にて作成

 労働者1人あたりの営業余剰・混合所得(純)を計算してみると、日本は横ばい傾向が続いており、おおむねフランスやイタリアと同程度であることが分かります。日本の製造業の手元に残る正味の利益は、相対的に少ないことになります。

 この違いを見れば、減価償却費に相当する固定資本減耗を含む場合は利益が多く見え、含まない場合は少なくなるという特徴が見て取れますね。

 米国はかなり高い水準で、なおかつ大きく拡大していますし、英国も日本の2倍以上の水準となっています。日本の製造業の本業の利益は、実際にはそれほど多くはないようです。

対付加価値比での国際比較

 もう1つの比較方法として、対付加価値比でも確認しておきましょう。1つの指標に対して複数の見方で立体的に理解することが重要であるためです。先ほどと同様に、まずは固定資本減耗を含む営業余剰・混合所得(総)から見ていきましょう。図6が、製造業における対付加価値比による営業余剰・混合所得(総)の国際比較です。

photo 図6:製造業における対付加価値比による営業余剰・混合所得(総)の国際比較[クリックで拡大] 出所:OECD Data Explorerを基に筆者にて作成

 日本は相対的に高い水準が続いていて、なおかつ上昇傾向であることが分かります。2024年には50.3%と主要先進国で最高水準です。付加価値に対して、企業側に残る利益の総額の割合が最も多いということです。

 それでは、固定資本減耗を差し引いた「純額」で見るとどうでしょうか。図7は、製造業における対付加価値比による営業余剰・混合所得(純)の国際比較です。

photo 図7:製造業における対付加価値比による営業余剰・混合所得(純)の国際比較[クリックで拡大] 出所:OECD Data Explorerを基に筆者にて作成

 近年の日本の製造業はおおむねフランスと同程度、ドイツやイタリアよりやや少なく、米国、英国とは大きな差があります。稼ぎの中で、企業側に残る取り分がやや少ない方になるようです。日本の製造業は、平均で見ればそれほど本業の利益が多いわけではないといえそうです。

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