それでは、フィジカルAIにおいて日本独自の強みを生み出せる領域はどこにあるのだろうか。
NECでは、フィジカルAIにおける日本の勝ち筋について「現場知の活用」「安全性の担保」「システム全体の最適化」をポイントだと位置付ける。
NECの宮川氏は「NECではフィジカルAIをロボットや機械個別のものではなく、人やAI、機械やシステムなどの全体を最適化するものだと捉えている。その中で、最終的には現場力と品質、これらを支えるものが日本の強みだ。しかし、これらは1社だけでは進められず、企業の垣根を越えてデータと知の循環を作ることが重要だ」と訴える。
日立製作所は、フィジカルAIとして具体的に取り組んでいる事例を紹介した。日立製作所の吉田氏は「フィジカルAIを最終的に社会に実装することを考えて、まず日立製作所内でうまくいった形を外部に展開することを考えている。その意味でまずは、鉄道、電力、製造、ロジスティクスなどで実用化を進めている」と説明する。
鉄道向けでは「HMAX Mobility」として、鉄道の自動運転化や保守の自動化などの点でフィジカルAIの活用を進めている。製造領域では、日立ビルシステムズ 水戸事業所で、ヒューマノイドを導入しフィジカルAIとして価値が出せる領域の見極めを進めているという。「最終的には、工場が自らデータから判断し、学習、実行のサイクルを回し、自らが進化する姿を目指す」と吉田氏は語る。
また、日本の勝ち筋について「熟練者の高い技能が大きなポイントだ。これを組織の力として生かすことができれば、フィジカルAIとしても差別化が可能となる。ただ、形式知化すると盗まれる可能性もあるので、セキュリティの確保は必要だ」と吉田氏は述べる。
安川電機では、フィジカルAIをロボット関連技術として捉え、ロボットによる自動化領域の拡大を推進する。安川電機の久保田氏は「フィジカルAIはロボットの文脈で捉えており、自動化領域を拡大するための技術の1つという考えだ」と説明する。
安川電機ではAIを活用し、より柔軟に作業を変更できるロボットとして「MOTOMAN NEXT」を2023年にリリースしている。さらにフィジカルAIを活用することで、不特定の人、不特定なコト、不特定な順番で起こるような場合にも対応することを目指している。
清水建設では、施工の監督を代替する「監督知能」と、作業を代替する「職人知能」の両面でフィジカルAIの活用を目指している。その中で日本の勝ち筋について、「現場力をフィジカルAIへ移すことが重要だと考えている。品質へのこだわりや自ら動く現場、チーム力に関して、それぞれ現場力を組み込んだフィジカルAIの実現を目指す」と清水建設の掛川氏は述べている。
モデレーターの東大 荒川氏は「ロボットを作る国からAIで現実世界を変革する国へと変革が必要だ。今後3〜5年の間にフィジカルAIを取り入れた非ヒューマノイドで先行する必要がある。非ヒューマノイドで活躍した後、ヒューマノイドや共通基盤などに取り組む必要がある。競争と共創の両輪で独創的なビジネスモデル構築と革新的な技術開発が求められる」とまとめていた。
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