工場全体を進化させるため、富士ソフトは保有する技術やサービスを4つのオファリングとして体系化した。富士ソフト 常務執行役員 組み込み/制御ビジネスユニット長 インダストリー事業本部長の大石崇人氏は、その全体像について「1から3のオファリングで設計や開発工程の高速化、ハードウェアを含めた生産環境の最適化、製造工程における検証や保守改善を提供し、これらをつなぐデジタルスレッドがオファリング4となる」と説明する。
オファリング1の設計/開発の領域では、PLM(製品ライフサイクル管理)とBOM(部品表)を中核に据え、製品の企画から設計、開発、生産準備までの工程をデータでつなぐ統合基盤を提供する。モデリングや解析、シミュレーションなどの技術を組み合わせて情報を一元管理することで、部門間の情報の分断を解消し、手戻りの削減や開発期間の短縮を図る。
オファリング2では整備された設計データを基に、仮想空間での高精度エミュレーションと現実空間のAIロボティクスを連携させる。その検証結果を実際のソフトウェアやハードウェアに反映させるとともに、現場のデータを仮想空間へ戻して継続的に改善を回すことで、ラインの立ち上げ期間の短縮や試作コストの削減を実現する。
オファリング3は、既存設備を生かした製造工程の自動化である。設備を全面刷新せずにセンサーやソフトウェアを追加し、既存のPLCやMESを連携させてデータを統合管理する。現場のタブレット入力なども組み合わせることで、稼働ロスの可視化やトレーサビリティーの向上、生産計画の最適化を支援する。
そして、これら3つの領域から得られるデータを横串でつなぐ役割を果たすのが、オファリング4のデジタルスレッドの構築を通じたデータ統合と活用である。設計から製造、品質、保全などの異なる工程やシステムに分散しているデータを集約し、デジタルスレッドとして統合する。集約したデータを基に、AIを用いた故障予測や品質改善、生産の全体最適化を行う基盤を整備し、現場の自律的な制御から経営層の迅速な意思決定までを一貫して支える仕組みを構築していく。
構築されたデジタルスレッドの基盤上で、自律的に動作するフィジカルAIをいかに社会実装していくのか。富士ソフトでは、単なる実証実験で終わらせず、実際の現場で動き続ける仕組みを提供するため、パートナー企業との連携による取り組みを進めている。
産業用ロボットの専門商社であるダイドーと協業し、連携技術への関心はあっても導入のノウハウを持たない企業に対し、ソフトウェア/ハードウェア/AIを一体化した「フィジカルAIスタートパッケージ」を商品化して提供する。2026年10月13日に同パッケージを正式発表する予定だ。短期間でフィジカルAIの価値を体験できる環境を整え、導入評価から本番稼働、他拠点への展開までの支援を目指す。
また、AMDやQualcomm、SiMa.aiといった主要な半導体ベンダーとのアライアンスによるエッジAI基盤の実用化も進める。顧客ごとの要件に最適なハードウェアを提供するマルチベンダー体制を構築し、日本の製造現場に合わせた個別最適化を支えていく。
現在、同社全体の売上高において、モビリティや組み込みを含む製造業向けスマート工場事業は約3割を占めている。今回の本格展開を機に、同領域で10%以上の2桁成長を目指す方針を示した。
「これまで企業内でDXの推進を掲げても、部門間の障壁によって実装まで至らずに足踏みするケースが少なくなかったが、現在は顧客側も工場の変革を必須の課題として捉えるフェーズに移行している。当社が50年以上にわたり培ってきた現場のシステムを熟知する強みを生かして、顧客企業の変革に長期的に伴走していく」(室岡氏)
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