1年でAfter AIの組織に生まれ変わったソラコム、「トークン資本」の安全な器へ人工知能ニュース(1/2 ページ)

ソラコムが、2025年7月から始めた「After AIの組織」に移行するための取り組みを説明。この新たな組織体制から生み出したマネージドAIエージェントサービス「SORACOM Agent」も紹介した。

» 2026年07月07日 07時15分 公開
[朴尚洙MONOist]
ソラコムの玉川憲氏 ソラコムの玉川憲氏 出所:ソラコム

 ソラコムは2026年7月2日、東京都内とオンラインで会見を開き、同月7日開催予定のユーザーイベント「SORACOM Discovery 2026」に併せてリリースする、ITの専門知識がなくともIoT(モノのインターネット)を活用した業務の自動化や現場改善、プロダクト開発を実現できるマネージドAI(人工知能)エージェントサービス「SORACOM Agent」について説明した。まずはβ版の位置付けとなるTechnology Previewとして提供を始める。

 同社 代表取締役社長 CEOの玉川憲氏は「人類史上最大級のインパクトとなった生成AIだが、個人的に一番衝撃を受けたのはAIコードエージェントである『Claude Code』の登場だった。ITの会社として、人よりもコードが書けてしまうものが現れ、足元がグラグラする感覚に陥った。人がコードを書く時代が急に終わりを迎えてしまった」と語る。

人がコードを書く時代が急に終わりを迎えてしまった 人がコードを書く時代が急に終わりを迎えてしまった[クリックで拡大] 出所:ソラコム

 つまり、これまで競争力としてきたプログラマーの開発力などがAIの基盤モデルに吸収されてしまい、ソフトウェア開発という観点では全ての企業が横並びになるということを意味している。「経営者として企業の競争力はどこに存在するのかと自問自答するようになった」(玉川氏)。

 危機感を感じた玉川氏は2025年7月、ソラコムを「After AIの組織」に生まれ変わらせることを社内に宣言した。同氏は「これは、会社創業の日に生成AIがそこにあるとしたらどんな働き方にして、どんな組織を作って、どんな会社にするかということだ」と強調する。しかし、ソラコムは既に上場するとともにグローバルに事業を展開するなど一定以上の規模にまで成長した会社である。「変化をするには痛みを伴うが、その変化を自ら抱きしめに行くことにした」(同氏)という。

ソラコムをAfter AIの組織へ ソラコムをAfter AIの組織へ[クリックで拡大] 出所:ソラコム

 変化の内容としては、200人近い従来の大きな組織を、ビジネスごとに小さなチームに分け、それぞれのチームがAIと一緒に仕事をするという組織体制にした。玉川氏は「正直に言うと、社員のみなさんにストレスが掛かったと思うしいろいろ大変なこともあった。ただ、現場のボトムアップの挑戦を尊んで、経営陣はその挑戦にコミットしてサポートすることにより、この1年で大きく変われたと感じている」と述べる。

After AIの組織に向けた取り組み After AIの組織に向けた取り組み[クリックで拡大] 出所:ソラコム

 現在は、開発、営業、顧客対応、事業開発、マーケティング、コーポレート業務などあらゆる現場で、さまざまなタスクやプロセスがAIで自動化され、人間と協業するようになっている。1年間の成果として、もともと100%だった社員のAI利用率に加えて、コーディングを生成AIがほぼ100%行うようになり、AIを活用した製品/サービスの開発が進み、売上高に対する販管費率を6ポイント削減できている。「ここで重要なのは人は減らしていないことだ。売上高を伸ばしつつAIで生産性を高めた」(玉川氏)。

After AIの組織への移行による1年の成果 After AIの組織への移行による1年の成果[クリックで拡大] 出所:ソラコム

 玉川氏が、この1年間の取り組みを抽象度高く整理したのが「After AI成熟度モデル」である。同モデルは、レベル1が個人利用、レベル2がデータ基盤、レベル3がAI支援タスク、レベル4がAI駆動プロセス、レベル5が複利ループの5段階に分かれる。現在多くの企業は、レベル2の企業データをAIと連携させられるかどうかの段階にある状況だ。AIによってタスクを自動化し組織内で共有するレベル3や、ほとんどの業務をAIに自律的にやらせるレベル4、人とAIが協業して業務プロセスをAIが修道で改善するレベル5には至っていない。

「After AI成熟度モデル」の概要 「After AI成熟度モデル」の概要[クリックで拡大] 出所:ソラコム

 玉川氏は、このAfter AI成熟度モデルと、マイクロソフト CEOのサティア・ナデラ氏が提唱する概念「トークン資本」に共通点を見いだした。ナデラ氏によれば、これからの企業は会社の中でAIを構築する力が必要であり、その上で「人がAIを作る→人がAIに教えられる→人の判断が早くなる→人がAIにフィードバックする」というLearning Loopを回すことで、複利的にトークン資本がたまっていくという。このトークン資本という言葉は、AIとやりとりする最小限の単位がトークンであることから命名された。そして、もともと企業にとって重要な人的資本がトークン資本を生み出す原動力となり、トークン資本が育つほど人的資本の価値も上がる。

人的資本とトークン資本の関係性 人的資本とトークン資本の関係性[クリックで拡大] 出所:ソラコム

 ソラコムにおけるAfter AIの組織への移行でも、大きな組織から切り出した小さいチームで人とAIのLearning Loopにより育てた自社のAI資産が競争力となっている。人の役割はAIを監督、判断、創造するAIのリーダーに変わり、人的資本の価値も上がったとする。

After AIの組織への移行で得られたもの After AIの組織への移行で得られたもの[クリックで拡大] 出所:ソラコム
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